せん妄のメカニズムを知れば、効果的な対応・ケアが見えてきます!今回はせん妄を引き起こす、特に注意したい薬剤を紹介。メカニズムや特徴を解説します。
抗コリン、ドーパミン増加、GABAに作用する薬剤はせん妄を引き起こす
身体疾患の治療や症状緩和のために薬剤を使用している場合、投与されてあまり期間が経過していない薬剤は、せん妄の原因として確認すべきです。せん妄の原因薬剤としては、下記が挙げられます。
メカニズムを考えると、抗コリン作用をもつ薬剤、ドーパミンを増加させる薬剤、GABAに作用する薬剤は、まれな例外はありますが、基本的にせん妄を誘発します(第4回図1、表1参照)。そのため、抗菌薬といった脳神経系に影響しなさそうな薬剤であってもGABAに影響する薬剤(マキシピーム®など)は要注意です。
また、メカニズムに不明点はありますが、ステロイドやオピオイドも、確実にせん妄の原因になる薬です。これらを一切使わないわけにはいきませんが、早期に中止、代替薬への切り替えを検討するべきでしょう。
まれな薬剤での症例報告もありますが鵜呑みはできません。例えば、NSAIDsやニューキノロン系抗菌薬をせん妄の原因薬剤としている成書1もありますが、臨床上遭遇することはあまりなく、むしろ投与の原因となった疼痛、感染症、基礎疾患を評価していないもの、精神疾患患者ばかり含まれた報告など、バイアスが否定できません。
せん妄の原因となる代表的な薬剤
睡眠薬・抗不安薬
【代表的な薬剤名】
マイスリー®(ゾルピデム)、ハルシオン®(トリアゾラム)、レンドルミン®(ブロチゾラム)、デパス®(エチゾラム)、ソラナックス®(アルプラゾラム)、ワイパックス®(ロラゼパム)
【メカニズム】
GABA↑
【せん妄での特徴など】
●超短時間作用型のものは過活動型、長時間作用型は低活動型せん妄になりやすいとされる。
●中止すると、すみやかにせん妄が改善する。
抗ヒスタミン薬
【代表的な薬剤名】
アタラックス®-P(ヒドロキシジン)、ポララミン®(d-クロルフェニラミン)、ドリエル®(ジフェンヒドラミン)※
※OTC
【メカニズム】
アセチルコリン↓
【せん妄での特徴など】
第2世代(抗ヒスタミン薬のうち、新しいもの。より古い第1世代と比較して副作用が少ない)以降の薬剤は、抗コリン作用が乏しく、せん妄誘発は少ない。
抗菌薬
【代表的な薬剤名】
マキシピーム®(セフェピム)、ゾビラックス®(アシクロビル)、フラジール® (メトロニダゾール)
【メカニズム】
●マキシピーム®:GABAに影響
●ゾビラックス®、フラジール®:不明
【せん妄での特徴など】
●マキシピーム®:低活動型せん妄が多い。ミオクローヌス(手足などのぴくつき)を伴うことがある。中止後2日ほどで改善。
●ゾビラックス®、フラジール®:脳症が低活動型せん妄になることがある。
抗パーキンソン病薬
【代表的な薬剤名】
アキネトン®(ビペリデン)、ネオドパストン®(レボドパ・カルビドパ水和物)、イーシー・ドパール®(レボドパ・ベンセラジド)
【メカニズム】
●アセチルコリン↓
●ドーパミン↑
【せん妄での特徴など】
●幻覚などがみられる。
ステロイド
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