せん妄のメカニズムを知れば、効果的な対応・ケアが見えてきます!今回はせん妄の背景因子のうち、神経伝達の異常について解説。アセチルコリン、ドーパミン、グルタミン酸などの変化をおさえましょう。

 せん妄の症状は、大脳辺縁系の過剰興奮、大脳皮質系・視床・中脳の活動低下(軽度の意識混濁)といったものが主な原因とされます。

 せん妄のメカニズムはいまだ不明点もありますが、その背景には神経伝達物質の異常神経炎症・サイトカイン概日リズム障害・メラトニン加齢による神経の変性血流や代謝異常などが関連しているとされます(図11-5

図1 せん妄の病態仮説

(文献4,5より一部改変して引用)

せん妄の背景因子:神経伝達物質の異常

 せん妄は脳の異常で起こり、認知症、気分障害、統合失調症といった疾患と類似点が多いです。それらの精神疾患の原因とされる神経伝達物質と同じ神経伝達物質の異常をもとにせん妄を説明する説は有力であり、せん妄の原因同定や、せん妄の対応として抗精神病薬を投与することの根拠となっています。

①アセチルコリン(表1-①)

 せん妄とアルツハイマー型認知症は症状が類似し、合併しやすいなど関連が強いとされます。そのため、アルツハイマー型認知症の原因であるアセチルコリン作動神経の異常はせん妄の原因として最も有力視されています。

この記事は会員限定記事です。