肺がんによる呼吸困難は、孤立化、生きがいの喪失といった精神的影響を患者さんに与えていることが研究からわかりました。研究結果をもとに、実践したいケアを紹介します。
※本記事は、下記の研究論文をもとに執筆したものです。
橋本晴美,神田清子:呼吸困難を抱える治療期進行肺がん患者の体験,日本看護研究学会雑誌,34(1),73-83,2011.
●呼吸困難に対処する患者さんの努力の過程を認め、理解を示す
●安楽に過ごせる呼吸や動作の習得に向けた教育的支援を行うことで、呼吸困難に対する患者さんの自己効力感を高める
●患者さんの状況や抱える心理を家族や周囲の人に代行して伝える
心理的・身体的側面などもあわせて呼吸困難や、患者さんの人生を考える
患者さんは、呼吸困難を単に息が苦しいという身体的苦痛としてとらえているわけではなく、自らの生活や人生に影響を及ぼすものを含めた総和として、呼吸困難の体験を認識していきます。
そして、特にがん患者さんの場合、呼吸困難が増強することががんのさらなる進行や悪化と結びついてとらえられることから、がん患者さんの呼吸困難はがんの進行がもたらす死の恐怖を同時に惹起する体験であると考えられます。
このため、呼吸困難を感じる瞬間の身体的苦痛だけでなく、呼吸困難がその人の生活や人生に与える影響は何かという視点をあわせもち、total dyspnea(トータルディスプニア)*1として多側面から症状体験をとらえ、アセスメントすることが必要です。
*1【dyspnea】呼吸困難。
多側面・包括的な呼吸困難のとらえかたと看護師が実践したいケア
1)身体的側面:自己効力感を高める
体位や活動を調整するなどして今ある呼吸困難による苦痛をできるだけ軽減するということが第一に重要です。
そのうえで、患者さん自身が呼吸困難に対してより効果的に対処できるように呼吸法や排痰法を体得し呼吸苦の悪化を予防します。
また、動作を続けて行わず間に休憩を入れる、一連の動作を分割して行う、ペース配分をしてゆっくり行うなど呼吸苦が最小限になるよう動作を工夫したり、他者に任せられるところは任せるなどエネルギーを効率よく使う方法を習得したりすることにより、コントロール感覚を身につけてもらいます。
このような呼吸困難に対する自己効力感を高める支援が重要です。
2)心理的側面:患者さんの状況や気持ちを代弁する
呼吸困難を抱える治療期進行肺がん患者さんの特徴として、他者に迷惑をかけたくないという心理から積極的な行動を避けるようになる行動がみられ、これは他者から見ると一見、無気力にとらえられてしまいます。
しかし、呼吸困難に対処しようという患者さんなりの努力の過程があるため、その過程を認め、理解を示すということも大切な看護となります。
また、呼吸困難の増強により今までできていたことが思うようにできなかったり、やりたいという気持ちがあっても思うようにできないということが増え、家族や周囲の人に負い目を感じている場合もあります。新たなことを始めることに不安や恐怖心を抱き躊躇(ちゅうちょ)することも増えていきます。
そのため、呼吸困難を抱えたことでどのような状況や気持ちに陥っているのか患者さんに代わって代弁することで、 家族や周囲の人に知ってもらうことも必要です。
3)社会的側面:周囲との関係・環境調整を行う
呼吸困難を伴いながら活動することで他者に迷惑をかけたくないという思いから活動を抑制するという対処行動は、外出の機会や他者との交流の機会を減少させることにつながり、患者さんを孤立させます。
このことは呼吸困難の存在そのものの表在化を妨げ、第三者が患者さんの呼吸困難に気付き、介入することを難しくさせると同時に、患者さんに周囲から理解されないという孤独感を抱かせます。
このため、心理的側面のケア同様、患者さんが呼吸困難を抱えていることでどのような状況や気持ちに陥っているのかということを、 周囲に知ってもらえるようにすることが必要です。
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