患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回はPCA(患者管理鎮痛法)を行っている患者さんの心理についての研究です。
疼痛の自己管理、患者さん自身はどう感じている?
PCAは鎮痛を効果的に自己管理できる

手術を受けた患者さんの疼痛管理の方法の1つである「患者管理鎮痛法(patient – controlled analgesia、PCA)」は、患者さんがボタンを押すことで、すぐに一定量の鎮痛薬を自分自身で投与できるものです1。医療者管理の鎮痛法とは大きく異なり、患者さん主体で疼痛管理ができます。
しかし、PCAを行っている患者さんがどのような思いを抱き、体験をしているかを探索した研究は少ないです。
そこで、本研究では手術後にPCA機器を使用した患者さんの体験を明らかにして、PCA施行における課題と対策、手術後にPCAを行う患者さんへの支援を検討しました。
本研究は、以下の倫理的配慮のもとに実施されたものです。
●本研究は、研究倫理審査委員会の承認を受けて行っています。
●対象者には口頭および文書で研究目的・方法・参加の自由・拒否や途中辞退の自由・個人情報の保護などを説明し、同意をいただいて実施しました。
●面接時には、精神的心理的な状態に常に注意を払いながら行いました。
研究の方法
疑問(調べたこと)
●患者さんは PCA 機器を効果的に使えている?
●術後疼痛を PCA で管理する患者さんは、どのような体験をして、どのようなことを感じている?
研究対象
●消化器系・婦人科系疾患による手術後にPCAを行 い、PCA終了後10日以内にある患者さん30名
研究方法
●PCAに関連した体験、PCAオリエンテーションを受けて感じたことについて、インタビューガイドを用いて半構造化面接法*を実施
●患者さんの語りから逐語録を作成し、Mayringの質的内容分析2の技法を用いて分析
*【半構造化面接法】ある程度の質問項目をあらかじめ決めておくが、対話の流れに応じ、表現や順序を変更して質問する面接法。
発見1:PCAの“メリット”に関連した体験内容
従来の鎮痛法では、痛みが生じたときに患者さんが医療者を呼び、注射などによる処置がなされます。そのため、鎮痛までに時間を要す、医療者を呼ぶことに気を遣う、また、処置中には同室の患者さんに気を遣う、といったことがあります。
しかし、PCA機器を使用した患者さんは、医療者やほかの患者さんへの気遣いをすることがなく、自分のタイミングで痛みに対処できます。また、短時間で対処できることから、【医療者に頼らずに自己のタイミングで対処できる】ことを体験していました。
痛みは主観的なもので個人によってその感じ方は異なり4、他者との共通感覚をもち得ないもの5と言われています。患者さんは「痛みは他人にはわからない」から、「自分で判断し、自己のタイミングで鎮痛薬を使用できる」ことを利点とみなしていたと考えられます。
また、PCA機器のボタンを押すと鎮痛効果があることを実感していたことから、PCA機器があることで【PCAによる安心感がある】ことを患者さんは体験していました。
このことから、患者さんは術後PCAによる疼痛管理ができることで、痛みへの不安や他者への気遣いを少なくできていることがわかりました。
発見2:PCAの“デメリット”に関連した体験内容
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