別部門での検査・治療から帰ったあとに起こる変化は意外と多い!担当ナースとしておさえておきたい、「帰室時の状態」や「異常への対応」をわかりやすく紹介します。
心カテ検査を行う目的は?
心臓カテーテル検査は、X線透視下でカテーテルを用いて行う右心カテーテル検査、電気生理学的検査、左心カテーテル検査があります。
右心カテーテル検査では、静脈系(内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈)にカテーテルを挿入して右心系(右心房、右心室、肺動脈)の機能を調べます。これにより心機能評価、心不全の診断を行うことができます。
電気生理学的検査では、主に静脈系(内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈)にカテーテルを挿入します。さらに心腔内へ電極カテーテルを挿入し、不整脈の有無やその種類を診断することができます。
左心カテーテル検査は、虚血性心疾患の診断や経皮的冠動脈形成術(PCI)または冠動脈バイパス移植術(CABG)後の冠動脈の再狭窄などを調べるために行いますそのため、この検査を受ける患者は、虚血性心疾患をもっている、あるいはもっていたため、心機能低下や胸痛発作の可能性といったリスクがあると考えられます。
左心カテーテル検査の穿刺部位は、橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈から選択されます(図1)。検査自体は30分~1時間程度で終了し、侵襲も低いことから1泊2日の入院で行われます。最近では、日帰りで行われる施設もあります。
今回は、比較的多く患者へ行われ、また動脈を穿刺するため術後は観察や安静への援助が必要となる左心カテーテル検査を取り上げます。
●虚血性心疾患
●心機能低下
●バイパスの狭窄
●胸痛発作
左心カテーテル検査の流れ
左心カテーテル検査は、以下のように進みます。
①仰臥位で局所麻酔を行う
②穿刺後シースを挿入し、ヘパリンを注入
※カテーテル操作における微小な血栓を予防するため
③カテーテルを挿入し造影等を行う
④止血デバイスで圧迫しながらシースを抜去し、帰室
穿刺部位は、医師が患者の血管の状態より上腕動脈か橈骨動脈、大腿動脈のいずれかを選択します。
また、シースの太さ、ヘパリン(微小な血栓の予防)の量や投与した時間によって、術後の出血や血腫を予測することができます。
帰室時は両手が不自由、出血のリスクも
術直前と比較して、患者のバイタルサインの変動が 20%以内、穿刺部位からの出血や疼痛の増強がない、胸痛発作がないことが確認されると帰室となります。
橈骨動脈、上腕動脈の穿刺の場合は、歩行時のふらつきがなければ歩行が可能であると判断し、車椅子で病棟まで帰ることができます(図2-①)。
患者の状態としては、前腕あるいは上腕へ点滴のためのルートが挿入され、一方の上肢は止血デバイス(図2)により固定されています。両手が自分の思うように使えない状態であるため、検査室から車椅子への移動の際は介助が必要です。
大腿動脈の穿刺の場合は、股関節の屈曲や下肢の動きを過度に行うと穿刺部位より出血するため安静が必要です。よって患者はベッドで帰室します(図2-②)。
止血のためのデバイスは、穿刺部位と出血状況から選択されます。止血デバイスは時間の経過とともに減圧していきます。減圧の時間や量については医師より指示が出されます。 また、穿刺部位や血圧などにより、圧迫解除の基準や術後の安静のめやすが異なります。
- 1.斎藤滋 監修:やさしくわかる心臓カテーテル 第2版.照林社,東京,2020.
2.坂本力 監修:ナースのためのIVRの実際と看護(第4版).バイエル薬品株式会社診断薬事業部,東京,2007.
この記事は『エキスパートナース』2017年12月号特集を再構成したものです。
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