脳の障害により、運動・感覚障害が出現することがあります。運動・感覚障害を理解するため、看護師が知っておきたい運動神経・感覚神経の伝達のメカニズムを解説します。

POINT

●脳疾患(出血、梗塞、腫瘍)により、該当部位に「運動障害(運動麻痺)」「感覚障害(感覚麻痺、感覚脱失、感覚鈍麻、感覚異常)」が起こりうる
●小脳にも統合性を司る役割があり、この部位の脳疾患(出血、梗塞、腫瘍)では「運動失調」が起こりうる

 私たちがふだん、“物をつかんだり”“動かしたり”するときの脳のメカニズムは、どのようになっているのでしょうか?
 ここではまず、「運動」や「感覚」は脳のどの部分のはたらきなのかを説明します。

「運動神経の伝達」のしくみとは?

 手を動かしたりするときの「動く」という指令は、脳の「前頭葉」と「頭頂葉」の境目にある「中心溝」前方の一次運動野(中心前回)に伝えられます(図1-1)。

図1 大脳・小脳の解剖と大脳皮質の機能局在
大脳・小脳の解剖と大脳皮質の機能局在のイラスト

 その後、一次運動野から運動神経の線維である上位運動ニューロンが、錐体路を通って運動の指令を出していきます。
 一次運動野には足や体幹、顔などの運動を支配している場所がそれぞれ分かれています。一次運動野図2-①)から大脳基底核と視床の間にある内包後脚(②)、中脳の大脳脚(③)を通り、延髄の錐体部(④)で多くの上位運動ニューロンは錐体交叉し、対側に指令が伝えられます。そこから脊髄(⑤)を通り、前角で四肢を支配する下位運動ニューロン末梢神経、⑥)へ指令が伝わり、手を動かすなどの運動へとつながります(この一連の運動の経路を、錐体路といいます)。

 錐体路には皮質延髄路皮質脊髄路があります。皮質延髄路は一次運動野から中脳、橋、延髄にある眼球を動かす神経や顔面の運動、嚥下に関係するそれぞれの神経核までの経路をいいます。皮質脊髄路は手足や体幹の随意的な運動の下位運動ニューロンまでの経路のことをいいます。

 運動は、錐体路以外にも、大脳基底核や小脳などのはたらきにより、箸を握る、歩くなどの動作の指令を、スムーズにしなやかに動かすはたらきが加わります(この経路を、錐体外路といいます)。

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図2 運動神経の伝達:錐体路の走行
運動神経の伝達:錐体路の走行のイラスト

「感覚(温度覚・触覚)神経の伝達」のしくみとは?

 感覚には、温痛覚触圧覚、バランスを崩さないように姿勢を保持する深部感覚や、嘔気や空腹感などの内臓感覚、味覚・視覚・聴覚・嗅覚などの特殊感覚ほかがあります。また、触っている場所が複数あると認知する2点識別や、感覚だけで物を識別する立体認知などの複合感覚があります。

 感覚は運動のメカニズムとは逆方向で、「冷たい」「痛い」などの感覚が、末梢の一次ニューロン図3-①)から、脊髄や延髄で交叉し、対側の二次ニューロン(②)に代わります。そして視床で三次ニューロン(③)となり、大脳の中心溝後方の一次体性感覚野(中心後回、図1-2)のそれぞれの身体各部の局在へと伝わります(④)。

 三叉神経や顔面神経などの感覚にかかわる脳神経は、それぞれの神経核を経由して二次ニューロン()に代わったあと交叉し、視床へと伝わり、三次ニューロンとなり()、一次体性感覚野のそれぞれの身体各部の局在()に伝わります。

 なかでも二次ニューロンと三次ニューロンの経路である視床は、嗅覚系を除くすべての感覚の情報を集め、大脳皮質へ刺激を伝える役割をもちます。そのため、この視床が障害されると、対側の感覚障害が生じます。
 なお、それぞれの感覚によって視床までの伝達経路は異なるため、障害される部位によっては、“温痛覚のみ”が障害されたり、“深部感覚のみ”が障害されたりします。

図3 感覚神経の伝達:外側脊髄視床路・後索の経路(温痛覚・深部覚)
感覚神経の伝達のイラスト
(文献1より引用、一部改変)

「運動の調整」のしくみとは?

 小脳では、大脳と情報のやり取りをしながら運動の記憶や学習を行い、また四肢の動きや発語などのスムーズな運動ができるように調整しています。このほかに細かい指先の動きなどの身体各部の筋肉の動きや眼球運動の調整、体のバランス保持などを担っています。

 小脳の解剖として、大脳と小脳との間に小脳テントと呼ばれる膜があり、後方を頭蓋骨に囲まれた後頭蓋窩の中に位置します。小脳の前方には脳神経が位置し、顔面や嚥下にかかわる神経が多く存在しています(図4)。そのため、小脳での病変によってスムーズな運動や調整だけでなく、脳神経にかかわる運動障害が起こるため注意が必要です。

(第10回)

1.美田誠二 編著:Ⅲ脳・神経系 ③感覚の伝導、脳神経・自律神経.得意になる解剖生理,照林社,東京,2010:47.
1.三井良之,松村譲兒 監修:運動.医療情報科学研究所 編,病気がみえる vol.7 脳・神経,メディックメディア,東京,2011;164-167.
2.三井良之,松村譲兒 監修:感覚.医療情報科学研究所 編,病気がみえる vol.7 脳・神経,メディックメディア,東京,2011;189-194.
3.馬場元毅:小脳.JJNブックス 絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第3版,医学書院,東京,2009:40.
4.馬場元毅:運動麻痺.JJNブックス 絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第3版,医学書院,東京,2009:111-121.
5.坂井建雄,河田光博 監訳:神経解剖̶ 12.機能系.プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖,医学書院,東京,2009:326-341.

※この記事は『エキスパートナース』2014年10月号特別付録を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。