輸液管理の前提知識をわかりやすく解説。輸液療法の目的や輸液の種類、CVポート・PICCなどの投与方法、輸液ポンプ・シリンジポンプの特徴など、看護師に必要な基礎知識をまとめています。
※この記事は『エキスパートナース』2026年5月臨時増刊号「点滴・輸液・夜勤 自信がつくキホンとコツ」の内容を再編集したものです。
輸液療法の目的と、使用される輸液の種類
輸液療法の目的・輸液の種類
輸液は、水分や電解質の補給、栄養補給、薬剤投与、循環血液量の維持など、さまざまな目的で使用されます。
輸液製剤とは、輸液製剤協議会において「静脈内などを経て体内に投与することによって治療効果を上げることを目的とした容量50mL以上の注射剤」と規定されています1。
輸液製剤は、電解質輸液製剤、水分輸液製剤、栄養輸液製剤、血漿増量製剤に大別されます。ここでは、上記のなかでもさらに種類が細かく分かれている電解質輸液製剤について説明します。
電解質輸液の種類
電解質輸液は、電解質の浸透圧が血漿と等しい等張電解質輸液と、血漿より低い低張電解質輸液に分けることができます(図1)。

①等張電解質輸液(細胞外液補充液)
等張電解質輸液は細胞外液補充液とも呼ばれます。前述のとおり電解質による浸透圧が血漿と等しい製剤で、投与された等張電解質輸液は細胞内には移行せず、細胞外液量を増加させます(図2)。

最も単純な組成の等張電解質輸液として、生理食塩液があります。これをさらに血漿の電解質組成に近づけた輸液がリンゲル液です。
生理食塩液やリンゲル液はアルカリ成分を含まず、Cl-が多く含まれているため、多量に投与すると血漿の重炭酸イオンを減少させ、アシドーシスを招く恐れがあります。その点を改良するために、リンゲル液にアルカリ成分を加えることで、より血漿の電解質組成に近い輸液として製剤化されたものが乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液です。各輸液に含まれている乳酸ナトリウムや酢酸ナトリウムは体内で代謝されて重炭酸イオンとなり、体液中のpH緩衝として作用します。また、炭酸水素ナトリウムは生体内で代謝される必要がありません2。それぞれの輸液に含まれる電解質や成分については、表1に示しています。
これら等張電解質輸液は、細胞外液を補充する目的で使用されます。主に、外傷や手術による出血、下痢・嘔吐などで急激に細胞外液が不足している状態に対して用いられます。

②低張電解質輸液(維持液類)
低張電解質輸液は維持液類とも呼ばれ、細胞外液および細胞内液の体液全体を増加させます(図3)。電解質組成によって、1号液から4号液に分けることができます。1号液から4号液の組成の違いは、生理食塩液と5%ブドウ糖液の配合割合です。

1号液はNa含有量、つまり生理食塩液の配合割合が最も多いです。そして、号数が大きくなるにつれてNa含有量が少なくなり、5%ブドウ糖液の配合割合が多くなります(図4)3。

輸液を投与する方法
輸液を注入する体の部位
輸液の投与ルートは、主に末梢静脈カテーテルと中心静脈カテーテルの2つがあります。その使い分けは、輸液と薬剤の種類、投与目的によって実施します(図5)。また、中心静脈に留置するカテーテルには、CVポート、PICCカテーテルがあります(後述)。

①CVポート(図6)
CV(central venous:中心静脈)ポートは、主に抗がん薬や静脈栄養の投与経路として、末梢静脈の確保が難しい場合や長期的な治療の場合に挿入します。薬剤を投与するポート(点滴をつないで薬剤を貯め、カテーテルに流す円板状の機器)を皮下に埋め込みます。皮下埋め込み型ポート、リザーバーと呼ぶこともあります。
ポートを埋め込んだまま日常生活を送ることができます。また、在宅でも点滴が可能です。

②PICC(図7)
PICC(peripherally inserted central venous catheter:末梢挿入式中心静脈カテーテル)は、末梢静脈から挿入して先端を中心静脈に留置するカテーテルです。適応は通常の中心静脈カテーテルとほぼ同じですが、中心静脈カテーテルと比べて挿入時の合併症が少ない、感染率が低いなどの利点があります。
欠点としては、カテーテルが細く長いので急速補液には適さないことがあります。また、腕を曲げるとカテーテルの屈曲や閉塞が起こりやすいです。

輸液で使う器具の種類(輸液ポンプ、シリンジポンプ)
輸液ポンプ
輸液ポンプは、設定した速度で薬剤を持続投与するときに使用します。設定した時間あたりの流量で、持続的に輸液を送り出すことができます。
1.輸液ポンプの目的
水分の補給、電解質バランスの補正と維持、栄養の補給、薬剤の注入
2.輸液ポンプの適応
●輸液の流量を厳密に管理したい場合
□循環に作用する薬剤(心不全治療薬、昇圧薬、降圧薬、抗不整脈薬、カリウム製剤等)
□血中濃度を安定させる必要がある薬剤(インスリン、鎮静薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗血栓薬等)
□抗がん薬
□中心静脈栄養法
□自然滴下管理が困難な場合
シリンジポンプ
シリンジポンプは、微量の調整が必要な薬剤を投与するときに使用します。シリンジポンプは、輸液ポンプよりもさらに精密に微量の薬剤を持続投与するときや、循環器に影響を及ぼすような重要薬剤を投与するときに使用します。
1.シリンジポンプの目的
水分の補給、電解質バランスの補正と維持、栄養の補給、薬剤の注入
2.シリンジポンプの適応
●輸液の流量を厳密に管理したい場合
□循環に作用する薬剤(心不全治療薬、昇圧薬、降圧薬、抗不整脈薬、カリウム製剤等)
□血中濃度を安定させる必要がある薬剤(インスリン、鎮静薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗血栓薬等)
□抗がん薬
当院では、輸液ポンプ、シリンジポンプの適応基準が定められており、基準に基づいて使用します。また、ポンプ使用中は、正しく投与されているかどうか、チェックリストを用いて点検を行います。
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入院中の患者さんの多くは輸液を行っており、輸液管理は看護師の診療補助業務の1つです。薬剤に関する知識はもちろんのこと、使用する機器や輸液療法に伴うリスクや合併症を理解し、安全に実施するためには、綿密な観察が必要です。輸液製剤からカテーテル刺入部までしっかりたどり、こまめな観察によって異常の早期発見に努めていきましょう。
- 1.輸液製剤協議会ホームページ:輸液製剤の定義.
https://www.yueki.com/yueki/intravenous_definitions/(2026.4.20アクセス)
2.三澤翔,竹内裕紀:輸液の種類.Nutrition Care 2022;15(8):46-51.
3.露木菜緒編:輸液管理-輸液の「キホン」と「新しい管理の考え方」-.Nursing Care+ エビデンスと臨床知 2019;2(3).
- 1.雀地洋平編著:安心・安全 自信がもてる輸液管理.南江堂,東京,2021.
2.露木菜緒編:輸液管理-輸液の「キホン」と「新しい管理の考え方」-.Nursing Care+ エビデンスと臨床知 2019;2(3).
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エキスパートナース2026年5月臨時増刊号
点滴・輸液・夜勤 自信がつくキホンとコツ
三浦まき 編、中村綾子 編、節原光江 編
東京ベイ・浦安市川医療センター看護部 編
B5・116ページ
定価:1,980円(税込)
照林社
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