特に意識して水分出納(in-out)を確認すべき状況や病態とは?今回は水欠乏性脱水(高張性脱水)、Na欠乏性脱水(低張性脱水)、混合性脱水の症状や輸液対応を解説します。

ベッドサイドで注意したい脱水のサイン

 身体は、「ある一定量(体重のおよそ60%の水分量)の体液」と、「ある一定の体液濃度」を維持しています。その体液量と濃度の維持に主にかかわるのが、腎臓と、電解質であるNaです。
 脱水を起こすと、体内の水分量や濃度に変化が生じます。

水欠乏性脱水のサイン

 頻脈血圧低下は、急激な水だけの喪失(細胞外液の減少)のサインである場合があります。徐々に起こっている場合は、体重減少として現れる場合もあります。
 この水だけを失った高張性脱水では、口渇感の訴えが出たりします。重症になると、口渇感を訴えられずせん妄失見当識などの精神症状が現れます。

Na欠乏性脱水のサイン

 体液の不足の状況は図4のように、細胞外液もしくは細胞内液の減少、または“両者”の減少のいずれかになります。
 水よりもNaが多く失われて低張性脱水となっているため、口渇感は現れても軽度で、倦怠感脱力感筋肉がつるなど、症状は神経や筋肉に現れます。

 著しい低Na血症では、昏睡全身性のけいれんなどが認められることもあります。体液不足時には、上記のほかにBUN/クレアチニン比、アルブミン、ヘマトクリットなどが上昇します。

図4 脱水による体液の不足

脱水による体液の不足

脱水時の尿の色、尿比重も観察を

 脱水により身体の中の水分量が低下すると、腎臓では通常よりもさらに再吸収を促進するため、尿量は減少します。
 すると、尿の水分は減少しますが、尿中の物質はそのまま排泄されるため、尿の色が濃くなります。

 ただし、尿の色はビリルビンや血液(血尿)に影響されやすいので、色だけで尿の濃さを判断するのは注意が必要です。そこで、できれば尿比重を簡易的に測定するとよいでしょう。
 図5の「尿スケール4以上」は、比重が1.030以上で脱水傾向にあると考えられます。

図4 尿スケール

尿スケール

脱水の原因ごとの輸液の対応

 脱水が軽~中等度であれば経口補水液で対応し、症状が重ければ輸液で対応します。
 脱水の原因ごとの輸液の対応について、図6に示します。

 ただし脱水の種類に限らず、図6のように1種類の輸液で水や電解質を補正することはほとんどありません。初期輸液(細胞外液)により循環動態が安定したら、欠乏輸液(生理食塩液や5%ブドウ糖など)と維持輸液(3号液など)で体液バランスの正常化を図ります。

図6 脱水の種類によって投与される輸液(極端な例)

「水欠乏性脱水」(図1)の場合

脱水の種類によって投与される輸液(水欠乏性脱水の場合)

*ちなみにこれがNa欠乏性脱水(図2)なら、低張液のみを入れると進行する可能性がある

●「Na欠乏性脱水」(図2)の場合

脱水の種類によって投与される輸液(Na欠乏性脱水の場合)

*ちなみにこれが水欠乏性脱水(図1)なら、細胞外液は満たされるが細胞内液は補充されない細胞外液のNa濃度はさらに上昇する恐れも

⇒このように「低張液のみ」「等張液のみ」の対応では不十分。そのため実際には下記のような混合輸液が投与される

緊急性が高い状態には初期輸液を投与

 循環血液量を確保し、循環動態を安定させる必要がある場合、急速な体液補正を目的とした初期輸液が投与されます。特に、低血圧意識障害ショックなどの状態を示している場合には緊急性が高く、急速かつ大量に行われます。

細胞外液保管(類似)液(等張液)※製品は一例

●生理食塩液

大塚生食注

大塚生食注(画像提供:株式会社大塚製薬工場)

●乳酸リンゲル液

ラクテック注アタリ

ラクテック®注(画像提供:株式会社大塚製薬工場)

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