「脳」と「麻痺」の基本と応用について解説!今回は急変のサインの可能性もある、舌の麻痺の見抜き方について紹介します。

活舌が悪くなった…舌の麻痺では何を確認する?

 なんか呂律が回ってないかなぁ…? そんなふうに感じたら、舌の動きを見たほうがよいでしょう。舌を出してもらうことを挺舌(ていぜつ)と言います。「舌を出してみてください」、そう伝えて下図のように舌が曲がっていたとしたら、どちらの麻痺かわかりますか?

挺舌

舌は“麻痺側に曲がる”

 上の図では、舌が向かって左側に曲がっていますよね。患者さんから見ると、右側へ曲がっているのがわかります。
 みなさん“前ならえ”をしてみてください。両手がまっすぐ伸びていますよね。このとき、右腕を前に出さないで左腕だけを前に出してみてください。身体が右側に曲がってしまいますね。右腕が「前に出ない」、つまり「麻痺している」と右側に曲がってしまうのです。

 そこで、右腕が舌の右の筋肉、左腕が舌の左の筋肉だとしてみましょう(図1-①)。舌の右側が麻痺をしていると、舌全体が右側に曲がってしまいます。つまり、 麻痺している側に曲がっていくことになります(図1-②)。

図1 舌の麻痺のイメージ

舌の麻痺のイメージ1
舌の麻痺のイメージ2

 ここで、【第1回】の錐体路の構造を振り返ってみてください(図5)。放線冠から束になった神経路は内包後脚から中脳の大脳脚を通って延髄で反対側に移動しますね。ですから、舌の右側に麻痺があるということは、脳の障害部位は左側にあるということになります。

 こうして、舌の動きが悪くなる(麻痺)と、「ラリルレロ」が言いづらくなります。ラ行を言うときには舌が上顎につきますよね。ラ行の発音状態を観察することも必要です。そして、舌の動きが悪くなると、食事の送り込みも悪くなるので、食事をしているときの「飲み込み」の状態もしっかり見ることが必要になります。

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