「脳」と「麻痺」の基本と応用について解説!今回は麻痺のある患者さんに行うトイレ介助のポイントを紹介します。
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積極的な排泄管理は、患者さんのQOLの改善になり、なによりも心身機能の改善をもたらします。自立して排泄できることは高齢者の尊厳やQOLを高めるものです。そのため、在宅へ戻られる患者さんのみならず、家族にとっても排泄の自立は最重要課題の1つとなっています。どんな患者さんであっても、トイレでの排泄行動を獲得するために援助する必要があります。
排泄は大きく3つの動作に分けることができます。「トイレへの移乗」「下衣の上げ下ろし」「後始末」の3つです。排泄の動作の流れに沿って、何が介助のポイントとなるのかを見ていきましょう。
排泄動作の流れと各動作のポイント
①便座に背を向けて立つ
・健側を軸にして方向転換
・便座に背を向けて、まっすぐに立つ
②下衣を下げる
・下衣を膝上あたりまで下ろす
・バランスが崩れやすいので、ナースは腋窩や体幹を保持する
③便座に座る
・座るときは、便座の中央にい
④排泄する
⑤お尻を拭く
・後ろから拭くより、股の間から拭くほうが姿勢は安定する
⑥下衣を途中まで上げる
・座ったまま、下衣を膝まで上げる
⑦立ち上がって、下衣を上げる
・1人で立ち上がろうとする患者さんもいるため、ナースから声かけを!
⑧排泄物を流す
・身体の向きを、便器のほうに向けて流す
姿勢を整え、椅子から立ち上がる
麻痺がある場合、トイレの移乗は、健側に介助バーがあるトイレを選びます。右麻痺があり左側が健側であれば、左側に介助バーがあるトイレを選びます。車椅子への移乗の際にも説明したように、介助バーの持つ位置、車椅子とトイレの位置関係などにも配慮する必要があります。
介助バーをつかんでもらうときには、やや前傾姿勢となるように車椅子の位置を調整します。それは、介助バーに近すぎると「L」の法則で立つことができず、垂直方向への動きが強くなるからです。患者さんは腕の力だけで立とうとして、バランスが悪くなってしまうのです。同様に、下肢が膝の内側に位置するように配慮します。
次に、車椅子から立ち上がって、便座への方向転換をします。便座への方向転換は、健側を軸にして転換します。
下衣を下ろし、便座に着座する
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