「脳」と「麻痺」の基本と応用について解説!今回は麻痺のある患者さんに行う清拭・更衣のポイントを紹介します。

 麻痺がある患者さんでも、できることはたくさんあります。すべてを介助者である私たちが行うことは、患者さんのためにはなりません。
 「学習された不使用」という言葉があります。これは麻痺側を使わないことを脳が学習してしまうということです。つまり、麻痺側を使わないことで、拘縮や筋肉の萎縮が助長されてしまいます。清拭でも入浴でも、できるところは自分でやってもらうことが原則です。

 麻痺がなくても、感覚障害が生じる場合もあります。感覚障害がある場合は、お湯の温度やタオルの温度を感じることが困難になります。健側(感覚障害のない側)はどちらなのかを確認し、健側にてお湯の温度を確認してもらったうえで清拭や入浴をしてもらうことが重要です。

清拭時のケアのポイント

 一般的な看護技術では「末梢から中枢に向かって拭く」となっていますが、じつはその根拠は明らかではありません。麻痺があり関節が拘縮している場合は、皮膚と皮膚が密着している場合があり、清潔の保持が困難となります。拘縮している関節を無理に広げようとすることで痛みが生じます。この痛みがさらに筋肉の痙縮を生み、拘縮を助長させ、骨折する可能性もあります。患者さんの表情や言動を確認しながら、痛みを発生させない位置を確認し清拭を行います。

 あとはやはり入浴です。どのような入浴方法が患者さんの負担にならないのか? を考えます。全身が温まると筋肉の緊張も取れます。そうすると洗える範囲も多くなります。また、理学療法士や作業療法士と協働し、関節が柔らかくなった後に清拭を行ったりすることもあります。

 麻痺側の関節可動域を把握することはとても重要です。角度までを把握することは通常の臨床では難しいと思います。患者さん本人からの情報や家族などから情報を収集し、苦痛なく、また清潔を保持するという目標を達成する必要があります。

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