川嶋みどり 看護の羅針盤 第23回

　20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 （ライフサポート社、2020年）。　

　この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

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　病気や障害や高齢のいかんを問わず、人間が人間らしく生きていくことをめざす看護実践の根底には、古くからその人の自然治癒力を大切にする思想がありました。
　それゆえに、 近年の高度医療 技術の進歩がもたらした数々の貢献を認めつつも、一方で大切な何かが失われ、軽視されていくことを感じないわけにはいきません。

　その1つが、人間が人間をケアすることの意味と価値ではないでしょうか。その意味で、看護こそ、近代医学の歪みを正し、個別なその人の自然治癒力を発現させるために、現在その持てる力を発揮できるのではないかと思われます。

（出典：『看護を語ることの意味 “ ナラティブ ” に生きて』160ページ、看護の科学社）