川嶋みどり 看護の羅針盤 第41回

　20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 （ライフサポート社、2020年）。　

　この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

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　「注射や処置に追われて、とても身の回りの世話はできない」と現場では嘆く。しかしこのことは、注射や処置と身の回りの世話の両者を満たしてゆくのに、注射や処置を選択して優先させ、身の回りの世話は後回しにされていることになる。
　換言すると看護師の業務内容のうち看護の機能からは第二義的な機能である診療介助行為を「どうしてもしなければならない仕事」とし、身の回りの世話は「余裕があればする仕事」となっているのである。(中略）
　
　看護師としては「身の回りの世話が大事だ」と考えるなら、まず第一にこのことがなされてないということへのもっと強い反省がなければならない。この概念と実践のズレが許されているところに看護師側の弱さ、自らの業務に対する認識がまだ不足しているのではないだろうか。

（出典：『看護技術の安楽性』58ページ、メヂカルフレンド社）