川嶋みどり 看護の羅針盤 第157回

　20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 （ライフサポート社、2020年）。　

　この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

　確かな技術論を身につけていれば、科学と技術の関連や相違についても正しい認識が得られよう。今日の看護技術をめぐる不毛の議論は、近代的科学観を相対化し得ない科学の捉え方にあると思うからである。科学を技術より高いレベルであると錯覚し、看護実践のもつ、より優れて具体的な特性や、人々の営みや苦痛までをも抽象化しようとする試みは、看護の発展にとって無用のものと言ったら言い過ぎであろうか。
　
　もちろん、技術の本質規定だけをもって、看護の直面する問題の解決にかえることはできないし、それが看護の向上発展に直ちにつながるものでもない。要は、この本質規定を個々の看護師の主体的な実践によって、具体的な場面にどのように展開できるかを立証してみることにある。

（出典：『看護技術の現在 看護の時代2』34ページ、勁草書房）

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