川嶋みどり 看護の羅針盤 第179回

　20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 （ライフサポート社、2020年）。　

　この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

　病人や高齢者にとっての食べることの豊かさを、看護の立場から考えてきました。これまでとかく、食欲がなければ、それは患者の側に問題があると考えがちでありました。しかし、提供した食事が、その患者の今の状態にとって適切かどうかを考え、食事摂取の環境が、美味しく楽しく食べる環境として相応しいかどうか、看護の立場からそれを整えるにはどうすればよいかを、まず考えて欲しいと思うのです。

　人間にとって食べることは生きることであり、美味しく楽しく食べることは人間らしさに通じる、ということを深く考えて、ともすると日常的に流されやすいこの面での援助方法を専門職として確立したいものです。

（出典：『看護を語ることの意味 “ナラティブ”に生きて』92ページ、看護の科学社）

そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら