急性期病院一筋で働いてきたWOCナースが、40歳を目前にして訪問看護に挑戦!訪問看護への転職、楽しさとやりがい、そして覚悟とは……。リアルな体験記をお届けします。
転職はまず自分自身を振り返り、可能性を模索してから
私のこの記事を読んでくれているということは、“私”か“訪問看護”に興味をもってくれていますよね?ありがとうございます!では、そんなあなたにいきなりですが、質問です!「あなたは、毎日仕事を楽しめていますか?」「その仕事はやりがいがありますか?」「仕事をやらされていると感じていませんか?」……などなど、質問は尽きないのでここでやめます(笑)。
私が確認したいことは、つまり「疲れていませんか?」ということ。そして、その疲れている環境から“逃げ出したい気持ち”になっていませんか?今の時代、看護師の価値は高まり、就職先が看護師を選ぶのではなく、看護師が行きたい職場を選べる時代です。ヘリコプターに乗り込んで人命を救助している人もいれば、私のような人もいます。自分に合ったステージで働ける!看護師はなんて恵まれた職業なんだっ♪さぁがまんして働かずに、心の思うがままに転職♪転職ぅ~♪
……ですが、心身ともに疲れきっていて、正常な判断ができない状態で、自分の将来を考えることはとても危険だと思います。特に訪問看護は、もはや“ブルーオーシャン(競争相手のいない未開拓の市場)”ではないです。これをまずは、はっきりとお伝えしたい!あなたが「今の環境を変えたい」と思っているなら、今の職場のよいところと悪いところを書き出して、何が原因か、何を突破できれば続けられそうなのか、結局何をしたいのか、今一度、自分自身を振り返ってみてください。そして、いろんな自分の可能性を模索してください。
その職場でしかできないことはあります。人生は一度きりしかありませんが、その職場も、一度出たら後戻りはできません。悪いところばかりではないハズ。わがままになっていませんか?その環境、もったいなくないですか?
訪問看護は楽しいけれど、楽ではない!
何だか、男女の恋愛にも通ずる話みたいな感じになってきたので、そろそろ本題に入っていきますが、訪問看護って、勘違いされやすいんです。「病院より、楽でしょ?」って。かく言う私も、失礼ながら以前はそう思っていました。夜勤はないし、難しいことはしないし、「あれ?楽かもー♪」って。でも、本当に訪問看護を楽して稼げると思って来るんだったら、知ってほしい!楽しいかもしれないけど、「楽じゃねーぞ」と(笑)。
少なくとも私は病院勤務のときよりも、楽ではないです。役職をいただいていることもあるでしょうが、体感で1.5倍は忙しい感じ。もちろん病院で働いていたときに手を抜いていたわけではありません。当時は当時で、一生懸命やっていました。でも、病院という大きな組織に守られていました。それは本当にありがたいことだったと、自分が外部に出たからこそ、そのありがたみがわかりました。
だから、先ほど尋ねたのです。わがままになっていませんか?その環境、もったいなくないですか?と。人は、同じ環境に長くいすぎたり、褒めらすぎるとダメになると私は思います。そして、“謙虚”という言葉を忘れてしまう。人ひとりなんて、がんばってもたいしたことはできないし、その勢いは続きません。やっぱり仲間が必要です。在宅では、仲間とともに、細く長く、そして打たれ強くなければいけません。経験はあってもよいですが、プライドはじゃまです。フラットにまいりましょう!“病院はすごい!在宅は(笑)”ではありません。役割が違います。
“人生の伴走者”となるやりがいと覚悟
ただ在宅は、自分の責任のもとに際限なくがんばれるので、やりがいは十分あります!ですが、病院のように守られるルールがあって、やさしい上司が止めてくれることもありません。ときには自分の家族と一緒に過ごす大切な時間にも急な連絡が入り、現場に向かわなければいけないこともあります。
前回も書きましたが、人の人生を背負わせていただくイメージ。いわば、“人生の伴走者”です。これを楽しいと思えないと、訪問看護はやるだけしんどくなってしまいます。というか、きっとやれません。残念ながら、“訪問看護は看護師の駆け込み寺ではない”です。今回のテーマを頂戴したとき、私はこれを初めに伝えたかったー!前置きが長くなりました(笑)。
気持ちの伝達こそが、地域連携となる
まだほかにも知ってほしいことがあります!訪問看護って、カルテを見れないのですよ。あたりまえなのですが(笑)。でも、これが結構大変で、われわれのような医師不在や施設のない、いち訪問看護ステーションの場合、退院時の診療情報提供書なども見ることができないのです。つまり、患者さんの現状や今後の方針が、本人の言葉や看護サマリーでしかわからない。しかも、看護サマリーは簡略化されてきていて、3行の文章にレ点チェックが入っているだけなんてことも。退院前カンファレンスもあったり、なかったりで。困りました……。
でも、私は急性期病院にいたからわかります。病院が忙しいことや時間がないことも。だからこそ、われわれにつなげてくれたらいいと思います!家に帰りたいが最終目標ではないですよね?その人が、その先に何を求めているのか。家に帰ってこういう希望があるから在宅を選んだ、ということを教えてほしいのです。中途半端なサマリーでも問題ありません。何よりも“気持ちの伝達”こそが、“地域連携”になるのではないかと思います。
病気や症状ではなく、その人や家族をみるということ
訪問看護師は、利用者さんにとって一番身近な医療従事者です。
病院勤務のときと大きく違うのは、
その利用者さんの環境・生活背景をより考え、
知識や技術で“病気や症状をみるのではなく、その人や家族をみる”こと。
訪問しているときは、その人のことだけを考えられる時間があります。
そこに、リンリン鳴り響くナースコールはありません。
どうしたらこの人の望むことができるかを考えられます。
もしも、その人のやりたいことが痛みでできないのであれば、どうしたら痛みを緩和して、やりたいことが叶えられるかを考えます。“できない”とやらない選択肢をとることは簡単です。
しかし、われわれはポジティブに“できる”方法を考えます。そして、前向きにできるように、わかりやすく伝えることが看護の役割の1つだと考えます。ただ、気をつけなければいけないことは、自分たちの看護の押しつけにならないように、意思決定支援をともにしていく。信頼関係を構築し、難しい選択を一緒に行っていくことが重要です。人が最期まで生き抜くことを支援することが、訪問看護の“寄り添い”だと思います。
さて、次回はいよいよ最終回!最後は、在宅のWOCナースとして感じていることをお伝えします。

次回(最終回)に続く
(毎月1回更新)
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