臨死期、看護師に求められる役割とは?臨死期にみられる変化や、臨死期における患者家族への声かけ、ケア介入のポイントなどを紹介します。
臨死期にみられる変化とは?
臨死期は、死が近づくにつれてさまざまな症状が現れます。基礎疾患によって個人差が当然ありますが、一般的には次のようにいわれています。
1~2週間前ごろにみられる変化
眠っている時間が多くなり、食事や水分摂取が減少します。また、筋力低下が著明となり、ベッド上で過ごす時間が主となってADLが低下します。複雑な意思決定は、この時期から難しくなることが多くなります。
数日~数時間前にみられる変化
亡くなる数日~数時間前に出現する徴候は、次の7つのカテゴリに分類されます1。
①呼吸の変化
臨床において、深い呼吸と浅い呼吸を繰り返すチェーンストークス呼吸は多くの死亡直前の患者さん
にみられます。また無呼吸も頻発し、そばでみている家族の不安につながることが多いです。咽頭部でゴロゴロと音を立てながら呼吸をする死前喘鳴も、多くの患者さんにみられます。
さらに死期が近づくと、呼吸とともに下顎が動く下顎呼吸へと変化します。下顎呼吸に移行すると、死亡まで数時間というところまで迫っている徴候であるため、「状態がさらに変化しており、お別れが近づいていること」などを家族に説明します。
②意識・認知機能の変化
不可逆的な低酸素血症や腎不全・肝不全などの臓器不全、電解質異常により、徐々に意識レベルが低下して昏睡状態へと至ります1。せん妄もこの意識障害の一種であり、死亡直前には多くの患者さんに出現します。
家族が不安に感じている場合には、死に至るまでの自然な経過であること、本人は苦痛に感じていない場合が多いことを説明します。
③経口摂取の変化
水分摂取時にむせやすくなり、今まで内服できていた薬が飲み込めないなどの変化がみられます。とろみ剤を使用しても飲水が難しくなることが多いです。意識レベルの低下により覚醒している時間も少なくなるため、水分摂取は難しくなります。
④皮膚の変化
四肢末端から、循環不全によって冷たくなり、色調も青っぽい色に変化します。また、顔面蒼白もみられます。家族が「顔色が土色みたいになった、血の気がなくなった」と表現することが多いです。
チアノーゼは、主に低酸素血症が原因で出現します。皮下の血管が豊富な足先で確認できることが多く、足先の変化を観察するとよいです。
じっとりとした、湿ったような皮膚状態になることもあり、多くの家族は「変な汗をかいている、でも手足が冷たくて氷みたい」と表現します。
⑤動的な状態の変化
「身の置き所がない」状態となり、何度も寝返りを打つ、布団をすぐに蹴飛ばすなど、じっとしていられない感じになります。医学的には、せん妄、倦怠感、不安や焦燥感、恐怖、アカシジア(じっとできず、そわそわする状態)などが入り混じった状態であるといわれています。
⑥全身状態の悪化
身体機能や臓器不全など不可逆性の状態悪化も徴候の1つです。
⑦医療・介護従事者の直感
臨床では「何だか数日前とは様子が違う」などの医療・介護従事者の直感がはたらく場合もあります。例えば、るい痩の進行に伴い鼻が尖って見えるため、いつもと印象が違って見えたり、会話の内容やテンポ、表情などに違和感を覚えたりします。
普段から日常生活をサポートしている看護師や介護職員のこのような「何か違う」という直感も軽視することはできません。医療従事者だけでなく、介護者やその他の職種であっても対象者のささいな変化を感じる力、その事実を他職種に伝えるチーム力は、非常に重要であるといえます。
臨死期における看護ケアの実際
臨死期の患者さんの状態を家族へどう伝える?
①医療従事者の“見立て”と家族の“認識”のズレは、悲嘆に大きな影響を与える
徐々に状態が悪くなる患者さんをみていると、家族は「これからどうなるのだろう」「あとどれくらい一緒にいられるのだろう」「苦しみが出てくるのだろうか」など、さまざまな不安を感じます。家族にとってだけではなく、医療従事者にとっても状態の悪化や予後の見通しなどのバッドニュースを伝えることは、非常につらいことです。
遺族から「悪いとはわかっていたけれど、こんなに早いとは思わなかった」という言葉を聞いたことはないでしょうか。医療従事者が十分に説明をしたと思っていても、医療従事者の見立てと家族の認識がずれていると、家族にとっては予想していないお別れとなってしまうことがあり、家族のグリーフ(大切な人を亡くしたときに起こる反応、悲嘆)に大きな影響を及ぼす場合があります。医療従事者が、患者さんの状態・予後の見通しについて家族と正確に情報共有をすることで、家族は患者さんの状況を理解し、落ち着いて見守ることができます。そして、残りの時間をどう過ごしたいかを一緒に考えられるようになり、少しずつお別れに向けて気持ちの準備をしていくことができます。
②看取り経験などを把握してニーズを明確にし、ケア介入を行う
表1に、家族への説明の例を示します。家族に看取りの経験がある場合には、誰をどんなふうに看取ったのか、その看取りからどんなことを感じたのかを聞いておくと、家族の理解度やニーズを把握するヒントとなり得ます。
表1 “お別れ”が近いときの説明の例
- 「血圧や酸素飽和度は、心臓の力が弱くなっているためうまく測れなくなっています」
- 「数字に表れる変化よりも、今は体に起こる変化をみていくことが大切です。一緒に変化をみていきましょう」
- 「手や足の色が変わるのは、心臓の力が弱まっていることを表します」
- 「顎を動かしながらの呼吸に変わったので、お別れが今日中になる可能性が高いと思います。ご本人は眠っておられるため苦痛はさほど感じておられません」
- 「ご家族からみて苦しそうにみえますか」
- 「ご家族はどなたかを看取った経験がありますか」
- 「今はお話ができますが、お話ができなくなる時が近づいていると思われます」
- 「どなたか会わせたい方はおられますか」
- 「付き添いのご希望はありますか」
(文献2より引用)
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