腸閉塞とイレウスの違いを解説。症状から病態、緊急度、原因を見きわめるための、看護師が押さえておきたいアセスメントの手順を紹介しています。

※この記事は『エキスパートナース』2026年11月臨時増刊号「看護の知識の総復習」の内容を抜粋したものです。

ここが核心!臨床の鉄則

☑腹部膨満、悪心・嘔吐、排便・排ガスの停止を認めたとき、まず考えたいのは「腸管内容物が通過できていない状態」である。原因には、大きく分けて次の2つがある。

☑機械的腸閉塞:癒着や腫瘍、ヘルニアなどにより、腸管の通り道が物理的に狭くなったり塞がったりしている状態。

☑麻痺性イレウス:腸管に明らかな物理的閉塞がないにもかかわらず、腸管の運動が低下・停止し、内容物が進まない状態。腸管麻痺と呼ばれることもある。

☑両者は共通する症状を示すが、原因、進行のしかた、必要な対応が異なる。したがって、看護師のアセスメントでは、「イレウスかどうか」だけで終わらせず、何が通過障害を起こしているのか、腸管の血流障害や腹膜炎を伴っていないかを考えることが重要である。

☑なお、臨床では「イレウス」が腸閉塞全体を指すように使われることもある。記録や申し送りでは、可能であれば「機械的腸閉塞」「麻痺性イレウス」「絞扼性腸閉塞」など、病態を具体的に表現すると情報が伝わりやすい。厚生労働省のマニュアルでも、麻痺性イレウスは機能的イレウスに属し、機械的イレウスとの鑑別が必要とされている。

みんなやりがち ナースの落とし穴

■「おなかが張っているからイレウス」と、一括りにしていないだろうか。

■腹部膨満は、機械的腸閉塞、麻痺性イレウス、便塞栓、急性大腸偽閉塞症、腹水、腹腔内炎症など、さまざまな病態で起こる。症状だけで原因を決めつけるのではなく、症状を起点に、病態、緊急度、原因へと考えを進めることが大切である。

■特に注意したいのが、腸管の血流障害を伴う絞扼性腸閉塞である。絞扼性腸閉塞では、腸管が締め付けられることで静脈還流や動脈血流が障害され、腸管虚血、壊死、穿孔、腹膜炎へ進行する可能性がある。

■「腸雑音が聞こえるから大丈夫」「便が少し出たから閉塞ではない」とは限らない。不完全閉塞や病態の初期には、排便・排ガスがみられることもある。

ベッドサイドで差がつく!「しくみ」と「根拠」の最速整理

機械的腸閉塞

■術後癒着、腫瘍、ヘルニア、腸重積、便塊などにより、腸管の内腔が物理的に狭窄・閉塞する状態である。

■閉塞部位より口側では腸液やガスが貯留し、腸管が拡張する。初期には、閉塞部を通過させようとする蠕動が強くなり、腹痛が周期的に増悪することがある。

■腸管運動が低下したり、腸管虚血が進行したりすると、腸雑音は減弱・消失することがある。したがって、腸雑音の亢進だけで機械的腸閉塞と判断することも、消失だけで麻痺性イレウスと判断することもできない。

麻痺性イレウス

■腹膜炎や膵炎などの腹腔内炎症、手術後、電解質異常、重症疾患、神経疾患、薬剤などにより、腸管の運動が低下・停止する状態である。

■腹部全体にガスや内容物が貯留し、腹部膨満、便秘、排ガス停止、悪心・嘔吐などが徐々に出現することがある。

■腸雑音は低下・消失することが多く、腹痛は疝痛せんつうよりも持続的で、機械的腸閉塞に比べて軽いことが一般的である。ただし、麻痺性イレウスでも腹腔内炎症や重症疾患が背景にある場合は、全身状態が悪化することがある。「痛みが強くないから緊急ではない」とは考えず、経時的な変化を観察する必要がある。厚生労働省のマニュアルでは、腹部膨満、著しい便秘、悪心・嘔吐などが持続する場合、薬剤歴も含めて早期に評価することが示されている。

絞扼性腸閉塞

■機械的腸閉塞のなかでも、腸管の血流障害を伴う状態である。

■次の所見があれば、絞扼性腸閉塞や腹膜炎を疑い、緊急度の高い状態として報告する必要がある。

●突然発症した強い腹痛、または時間とともに増悪する腹痛
●疝痛から持続痛へ変化する腹痛
●限局または広範な圧痛
●反跳痛、筋性防御、腹壁の硬さ
●発熱、頻脈、血圧低下、冷汗、意識変容
●腹部膨満の急速な増悪
●嘔吐の増加、血性排液、血便
●尿量低下や脱水所見

■腸雑音が減弱・消失していても、「麻痺性イレウス」と決めつけてはならない。腹痛や腹膜刺激症状、循環動態を確認することが重要である。

思考プロセスの可視化 ベッドサイドでまず何を優先して考え、どう動くか

■アセスメントでは、全身状態、症状の経過、腹部所見、原因、減圧チューブの状態を順に確認する。

①全身状態と症状の経過を確認する。

■意識、脈拍、血圧、体温、尿量、末梢循環を確認する。頻脈、血圧低下、冷感、冷汗、意識変化、尿量低下があれば、脱水や腸管虚血などによる全身状態の悪化を疑う。

■発症時期、腹痛の性状と変化、嘔吐・腹部膨満の程度、最後の排便・排ガスの時期を併せて確認する。特に、間欠的な腹痛が持続痛へ変化した場合は注意が必要である。

②腹部所見を確認する。

■腹部を診察する際は、患者を仰臥位とし、膝を軽く曲げてもらう。腹壁の緊張がゆるみ、圧痛や筋性防御などを確認しやすくなるためである。疼痛が強い場合は、無理のない範囲で体位を整える。

■腹部のアセスメントは、視診→聴診→打診→触診の順に行う。

●視診:腹部膨満の程度、左右差、皮膚の緊張、手術瘢痕、ヘルニアの有無を観察する。

●聴診:腸雑音の有無や変化を確認する※。腸雑音だけで病態を判断せず、腹痛や全身状態と併せて評価する。

※腸雑音単独で病態を判断できない点は、「機械的腸閉塞」で述べたとおりである。聴診の部位や方法は施設の手順に従い、一定の方法で経時的な変化を確認することが基本となる(4か所すべてを聴取する方法のほか、1か所で確認する簡便な方法もある)。

●打診:鼓音や濁音の分布を確認し、腹部膨満の程度や腹水の可能性を評価する。

●触診:圧痛、反跳痛、筋性防御、腹壁の硬さを確認する。強い圧痛や腹膜刺激症状を認めた場合は、腸管虚血や腹膜炎の可能性を考え、すみやかに報告する。

③原因と背景を確認する。

■腹部手術歴、腫瘍・ヘルニア・炎症性疾患の既往、最近の手術や感染の有無を確認する。

■便秘や排便習慣、電解質異常、脱水、活動性低下、臥床の状況を確認する。

■オピオイド、抗コリン薬、抗精神病薬、鎮痙薬などの使用については、持参薬や頓用薬も含めて確認する。薬剤の変更や中止は、医師・薬剤師と連携して行う必要がある。

④減圧チューブ※の状態を確認する。

■胃管や経鼻腸管が挿入されている場合は、固定位置、屈曲・閉塞、吸引状況、排液の量や性状を確認する。

■挿入後の腹部膨満や悪心・嘔吐の変化も観察する。排液の急増、血性排液、吸引不良、腹部症状の悪化を認めた場合は、すみやかに報告する必要がある。

※「イレウス管」とは、一般に経鼻的に挿入する長い腸管減圧チューブである。腸閉塞では、閉塞部より口側に腸液やガスが貯留し、腸管内圧が上昇する。経鼻胃管や経鼻腸管(イレウス管)で内容物を排出し、腸管内圧を下げることで、腹部膨満や嘔吐の軽減、腸管への負担軽減を図る。ただし、減圧により症状が改善しても、絞扼性腸閉塞や腸管虚血が否定されたわけではない。チューブの位置・固定・開通性・排液の量や性状とともに、腹痛、腹膜刺激症状、バイタルサインなど腹部所見や全身状態の変化を継続して観察する必要がある。

先輩や医師に聞かれたら、こう切り返す!

■「おなかが張って苦しい」という訴えに対し、先輩や医師から「おなかの状態はどう評価する?」
と聞かれて
「腸雑音が消失しており、腹部全体の膨満と持続痛を認めます。麻痺性イレウスを含めて鑑別したいです。電解質バランスや抗コリン薬の使用状況を確認します」

Column 入れ子構造で考える

 臨床では、1つの症状の奥に複数の病態や原因が重なっていることがあります。例えば、腹部膨満を認めた場合、次のように一段ずつ奥へ進んで考える必要があります。

腹部膨満のアセスメントの図

 このように、症状だけで判断をせず、病態、緊急度、原因・背景へと考えを深めるとアセスメントを整理しやすくなります。ただし、甲状腺機能低下症は、腹部膨満の患者で最初に疑う疾患というより、便秘、寒がり、体重増加、活動性低下、徐脈、嗄声、浮腫などの所見がある場合に背景疾患の1つとして確認する位置づけです。検査歴や服薬状況も併せて確認しましょう。

 入れ子構造は、次の4層で考えると実践に活用しやすいです(図1)。

図1 原因・背景を中心とした入れ子構造
原因・背景を中心とした入れ子構造の図

 例えば、「腹部膨満がある」という報告を次のように具体化することで、単なる症状報告から、緊急度を含むアセスメントになります。

腹部膨満が前回より増悪し、排ガスはない。嘔吐が増え、脈拍も上昇している。腹部には持続痛と圧痛がある。機械的腸閉塞だけでなく、絞扼や腸管虚血を疑う所見がないか、早急な評価が必要である。

\続きは誌面で/

EN2026年11月臨時増刊号表紙

エキスパートナース2026年11月臨時増刊号
看護の知識の総復習

剱持雄二 著
宮国泰彦 医学監修
B5・148ページ
定価:1,980円(税込)
照林社

1.小山文一,久下博之,尾原伸作,他: III 小腸・大腸 腸閉塞.臨床外科 2022;77(11):145-150.
2.田島ジェシー雄,髙橋孝夫,松橋延壽,他:絞扼性腸閉塞の治療戦略と手術.特集 修練医必携 腸閉塞の治療戦略と手術.手術 2021 ;75(12):1767-1772.
3.中川将視,梅谷有希,平湯恒久,他:腹腔鏡下手術が適応可能であると考えられた絞扼性腸閉塞の1例.日本腹部救急医学会雑誌 2022;42(3):473-476.
4.厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 麻痺性イレウス 平成20年4月(令和3年4月改定).
https://www.pmda.go.jp/files/000240120.pdf(2026.9.20アクセス)
5.吉田心慈:jmedmook100 フレーミングでとらえる臨床推論 論理的思考で診断に迫る.日本医事新報社,東京,2025.

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