BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が高いときに見るべきポイントを整理。BNPとNT-proBNPの違い、ARNIによるBNPへの影響など、看護師が知っておきたい知識を厳選し、臨床現場で観察やケアにどうつなげればよいかを解説しています。
※この記事は『エキスパートナース』2026年11月臨時増刊号「看護の知識の総復習」の内容を抜粋したものです。
☑BNPは、身体所見と併せて評価する。数値だけではなく、呼吸状態や浮腫、体重変化、腎機能などと組み合わせてみることが大切である。
みんなやりがち ナースの落とし穴
■BNPが高いと、すぐに心不全と決めつけていないだろうか。
■BNPは心負荷の指標であり、慢性心不全、高齢者、腎機能障害がある患者では、もともと高値の
場合もある。
■注意したいのは、数値そのものだけでなく、ベースラインからの変化や身体所見とのずれである。
■数値が下がっていても起座呼吸や頸静脈怒張が残っていれば、うっ血が十分に改善していない可
能性がある。逆に、高値でも、普段からその程度で推移している患者もいる。
■心不全治療に使うARNI(サクビトリルバルサルタン、商品名:エンレスト®)を開始すると、BNP
が上がる場合があるため、数値だけで心不全増悪と決めつけない視点も必要である。
ベッドサイドで差がつく!「しくみ」と「根拠」の最速整理
■BNPは、心筋が引き伸ばされると心室から分泌され、利尿や血管拡張で負荷を軽減する。
BNPとNT-proBNPの違い
■BNPはホルモンとして作用する本体のこと。半減期が短いため、変化を比較的早く反映する。
■NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ぺプチド)は活性のない副産物のこと。長く血中に残
るため、安定して測定しやすく、心不全の有無や、経過をみたいときの目安になる。
■BNPとNT-proBNPはいずれも腎機能の影響を受けるため、eGFRやCrと併せて評価する。
BNP・NT-proBNPの基準値
| BNP | NT-proBNP | 評価の目安 |
| 18.4pg/mL以下 | 55pg/mL以下 | 正常範囲。心不全の可能性は低い |
| 35pg/mL未満 | 125pg/mL未満 | 軽度上昇。基礎疾患や経過を要確認 |
| 35pg/mL以上 | 125pg/mL以上 | 心不全の可能性あり |
●高齢者や腎機能低下があると、BNPはもともと高めになる。
●慢性心不全では、高値で安定している場合もある。
ARNIとBNP
■サクビトリルバルサルタンを含むARNIでは、ネプリライシン阻害の影響により、BNP値が上昇することがある。ただし、その上昇の程度は患者の病態や測定法によって異なり、すべての患者で上昇するとは限らない。そのため、ARNI開始後や増量後のBNP値は、単独で心不全の悪化を示すわけではない。症状、身体所見、体重、尿量、腎機能、胸部X線画像、心エコーなどと併せて評価する。
■心不全治療の経過観察では、ARNIの影響を直接受けにくいNT-proBNPが参考になる場合がある。
■ただし、NT-proBNPは腎機能の影響を受けやすいため、eGFRやCrと併せて解釈する。なお、NT-proBNPはBNPより高く出やすい。腎機能がほぼ正常なら目安はBNPの約3倍程度だが、腎機能が低下している患者では乖離が大きくなり、5~6倍以上になることもめずらしくない。
〈プラスα知識〉
「NT-proBNP」は腎不全で跳ね上がる
BNPは心臓から出たあと、身体ですぐに分解されますが、NT-proBNPは分解されずに腎臓から排泄されます。BNPよりNT-proBNPが高く出ることがあり、特に腎機能低下ではNT-proBNPが高値になりやすいです。単独の数値では判断せず、腎機能や症状、身体所見と併せて評価しましょう。
思考プロセスの可視化 ベッドサイドでまず何を優先して考え、どう動くか
①過去のデータを確認し、ベースラインを把握する。
②呼吸困難、浮腫、頸静脈怒張、体重増加、IN/OUTバランスをみる。
■左心不全のサインとしては、呼吸困難、起座呼吸、クラックル(副雑音)、SpO2低下を確認する。
■右心系を含む全身うっ血の評価として、下腿浮腫、頸静脈怒張、体重変化、尿量、IN/OUTバラン
スを確認する。
③数値の変化、身体所見、腎機能データを併せて、心不全の増悪か、腎機能低下の影響かを考える。
先輩や医師に聞かれたら、こう切り返す!
■医師や先輩から「BNPが高いけど、どうアセスメントする?」と聞かれて「BNPは上昇していますが、起座呼吸と体重増加もあります。腎機能低下の影響も考慮しつつ、うっ血の進行に注意してIN/OUTバランスを管理します」
Column ARNI使用患者の注意点
ARNI(エンレスト®)を開始すると、BNPが数値上、上がることがあります。これは薬の効果で、心臓を守るホルモンが分解されにくくなっているためです。数値だけであわてず、症状や身体所見と併せて評価することが大切です。
\続きは誌面で/

エキスパートナース2026年11月臨時増刊号
看護の知識の総復習
剱持雄二 著
宮国泰彦 医学監修
B5・148ページ
定価:1,980円(税込)
照林社
- 1.日本心不全学会:心不全マーカー検査をご存じですか?.
https://www.jhfs.or.jp/topics/files/BNPQ&A.pdf(2026.9.20アクセス)
2.橋本亨:[BNP,NT-proBNPに関する疑問①]循環器専門医への紹介の目安となるBNPまたはNT-proBNPの値はいくつでしょうか?.臨床雑誌内科 2024;134
(6):1183-1185.
3.筒井裕之:「2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」解説.日本病院薬剤師会雑誌 2022;58(11):1282-1286.
4.衣笠良治:高齢者のHFpEF(疫学と治療).日本老年医学会雑誌 2021;58(3):364-370.
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