せん妄のメカニズムを知れば、効果的な対応・ケアが見えてきます!今回はせん妄の薬物療法を取り上げます。薬物療法を行うときの注意点を確認しましょう。
漸減・中止を視野に、補助的に使用
せん妄の薬物療法としては、過活動型せん妄の興奮、幻覚、妄想、不眠などに対し、抗精神病薬が主に使われています。抗精神病薬はドーパミンを遮断しますが、これは炎症など原因を改善しているわけではなく、あくまでも対症療法です。
肺炎の治療に例えると、解熱剤に該当し、表面上の症状を緩和しているにすぎません。実際に、抗精神病薬がせん妄患者の予後を改善するという根拠はなく、認知症患者での月単位の投与は死亡率が高まるとの報告1もあります。
そのため、せん妄の薬物療法については、以下の原則に則って行い、漫然と使用しないことが重要です。
せん妄の薬物療法のポイント
●必要な安静や安全を守り、治療やケアができるようにするため補助的に使用する。
●睡眠の確保や、穏やかになってもらう効果を期待する。
●症状が3日~1週間程度安定したら、漸減・中止を検討する。
- 1. Maust DT,Kim HM,Seyfried LS,et al.:Antipsycho tics,other psychotropics,and the risk of death in patients with dementia:number needed to harm.JAMA Psychiatry 2015;72(5):438-445.
※この記事は『エキスパートナース』2019年10月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。