医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回はハイリスク薬の1つである筋弛緩薬(筋弛緩剤)を取り上げます。呼吸停止のリスクがある筋弛緩薬について、注意点や正しい使い方を解説します。

筋弛緩薬は取り違えて使用すると呼吸停止に

危険な理由:呼吸筋を麻痺させる作用をもっている

 全身麻酔用筋弛緩薬は、手術のときの筋弛緩を目的に使われます。これにより、気管挿管が容易になり、外科手術に必要な筋弛緩を維持することができます。したがって、投与中は呼吸筋麻痺によって自発呼吸が消失するので、麻酔器など人工呼吸器を装着しなければなりません。そのほかにも、いろいろな疾患による筋緊張の異常を和らげるために使われることがあります。

 主な筋弛緩薬の種類と特徴を以下に示します。①の全身麻酔用筋弛緩薬は、筋肉の神経筋接合部のアセチルコリンによる信号の伝達を遮断することによって、全身の骨格筋に対する強力な弛緩作用を示します。また、骨格筋だけでなく、呼吸筋にも作用して麻痺が起こり、前述のように自発呼吸がなくなります

 したがって、使用する場合には人工呼吸管理が必須となります。②・③も全身性の筋弛緩作用を示しますが、①に比べ作用は弱いため、②・③の代わりに安易に①を使用することがないよう、注意が必要です。

主な筋弛緩薬の種類と特徴

①神経筋接合部でニコチン受容体の機能を低下させる

ロクロニウム臭化物(エスラックス®)、ベクロニウム臭化物(ベクロニウム)

特徴:
●骨格筋のニコチン受容体を遮断して筋弛緩を起こす。
●使用中は人工呼吸管理が必要。
●手術時の筋弛緩に用いられる。
●作用および使用法について熟知した医師によってのみ使用する。

スキサメトニウム塩化物水和物(スキサメトニウム)

特徴:
●ニコチン受容体に結合して持続的に受容体を刺激することにより機能を低下させる(持続的脱分極)。
●使用にあたっては、必ずガス麻酔器または人工呼吸器を準備。
●呼吸停止を起こすことが非常に多いため、人工呼吸や挿管に熟練した医師によってのみ使用する。

②筋肉細胞のCa 2+濃度上昇を抑える

ダントロレンナトリウム水和物(ダントリウム®

特徴:
●痙性麻痺(脳卒中の後遺症や脳性の麻痺などによる筋肉のこわばり)に有効。
●全身麻酔による悪性高熱や精神病用薬などによる悪性症候群にも有効。

③脳と脊髄に作用して骨格筋を弛緩させる

チザニジン塩酸塩(テルネリン®) 、バクロフェン(リオレサール®

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