オンライン診療ってどんな場面でどう行われているの?①歴史と概要

おさえておきたいこと

オンライン診療の実際
●完全予約制で実施される
●症状が安定していることや、 視診と問診で診療できる範囲であることが条件
●オンライン診療は、 対面診療や入院加療、 在宅診療と組み合わせて用いる「第4の診療形態」

実際のオンライン診療の流れ:予約→診療→処方箋郵送

 実際のオンライン診療はどんな流れで行われるのでしょうか。一般外来での方法を説明します。

 オンライン診療は完全予約制です。オンライン専用の診療システムに患者さんが登録を行い、予約を入れます。

 医療機関によってシステムの違いがあり、少しずつ差はあります。汎用システム(LINEやSkype、Zoomなど)を用いている医療機関もあるようですが、セキュリティの面で問題が起こりやすいことや、予約や窓口会計の支払いを別のシステムで行わなければならないことなどから、私は専用システムをお勧めしています。

 患者さんは事前に問診表に記入したり、必要があれば患部の写真を添付するなどができます。

 予約時間になると、医師の側から患者さんに呼び出しコールをかけます。画面上で患者さんと対話が行われます。

 処方は、医師が処方箋を出して基本は患者さんの自宅に郵送しますが、2020年9月よりオンライン服薬指導が解禁されたので、患者さんの希望があれば医療機関から患者さんが指定する薬局へ連絡して、オンラインで服薬指導を受けてもらうこともできます(これは2020年4月10日からの新型コロナウイルスによる時限的・特例的措置のなかでも行われていました)。

 オンライン診療・オンライン服薬指導に電子処方箋がプラスされれば一気通貫のオンライン診療形態ということになりますが、現在はまだ紙の処方箋しか発行できません。オンラインで服薬指導を受けた患者さんは、薬剤を自宅へ宅配便などで届けてもらうことができます。
 オンライン診療の導入例を、図1に示します。

図1 オンライン診療の導入例

精神疾患や慢性疾患などで用いやすい

 オンライン診療は、医師患者間の信頼関係が形成されていることを前提に、精神疾患・生活習慣病・服薬管理を必要とする慢性疾患・小児慢性疾患・神経発達症・アレルギー性疾患・皮膚疾患・便秘症・夜尿症などに適応があると考えられます。

 また、症状が安定していることや、視診と問診で診療できる範囲(デバイスの性能や照明の具合にもよる)であることが条件です。
  オンライン診療は、診療のすべてをオンラインで行うものではなく、対面診療と組み合わせて、またあるときは入院加療や在宅診療と組み合わせて用いるものです。入院・外来・在宅に次ぐ、「第4の診療形態」と言えます(図2)。

図2 オンライン診療の位置づけ

海外では日本に比べて普及が進んでいる

 英語圏ではオンライン診療のことをtelemedicine(テレメディスン)と呼んでいます。欧米では20年くらい前から普及しています。ここ10年くらいでインドや中国では爆発的に広がっています。
  また、北欧やエストニア、イスラエルといった国々で は行政機能のIT化とともにtelemedicineはごく普通のこととして広がり、個人健康情報(PHR)として記録されるシステムが整ってきています。
 
 インドや中国は人口が多く、プライマリケアが必ずしも充実していなかったと考えられます。そこでtelemedicineが多くの人々に受け入れられたのでしょう。

オンライン診療の保険点数適正化がカギに

 我が国は、国民皆保険制度が充実し、いつでも一定レベルの医療にフリーにアクセスできるところから、患者さんの側にどうしてもオンラインでなければ、というニーズが少ない面もあると思います。

 しかし、コロナ禍が、患者さんの受診行動を大きく変えました。これからは我が国においても、非対面での診療の意義が認められていくと思います。

 そのためには、これまで低く抑えられていたオンライン診療の保険点数を適正化することがカギになると考えています。

 これまではどちらかというと開業医を中心に導入されてきたオンライン診療ですが、診療報酬適正化によって、病院における診療のなかにも取り入れられていくことを期待しています。

この記事は『エキスパートナース』2020年12月号の記事を再構成したものです。
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