日常的に行う末梢留置カテーテルの穿刺や管理について、それらを「なぜ行うのか」を解説していく連載。今回は末梢留置カテーテルの留置期間と感染症の関連について取り上げます。
「末梢留置カテーテルの“なぜこうする?”」の連載まとめはこちら
留置期間を延長しても静脈炎・感染の徴候がなければ交換は必要ないと考えられる
2011年にCDC(米国疾病管理予防センター)から出された『血管内留置カテーテル関連血流感染予防のためのガイドライン』では、「感染や静脈炎のリスクを低減するために72~96時間ごとよりも頻回に交換する必要はない」、さらに「必要に応じた入れ替えについては今後の検討事項」と記載されています1。
最近では、留置期間を延長しても静脈炎の発生率に有意な差は認められなかったという報告があり、留置期間の上限については明らかになっていません。
末梢留置カテーテル関連血流感染症(peripheral line-associated bloodstream infection、PLABSI)は、中心静脈カテーテル関連血流感染症(central line-associated blood stream infection、CLABSI)と比較し、発生頻度は低いと報告されています。
しかし、末梢留置カテーテルは使用頻度が多いため、PLABSIの発症件数は少なくないと考えられます。
また、末梢留置カテーテルを72時間以上留置した場合、血栓性静脈炎やカテーテルの細菌定着が増加したという報告もされています2。さらに、PLABSI症例のうち86.7%が、カテーテル留置期間が72時間を超えてからの発生であったと報告されているものもあります3。
したがって、静脈炎や感染の徴候がなければ96時間以上留置することは可能であると考えますが、継続する際はカテーテル挿入部位を毎日観察し、静脈炎などの感染徴候がないことを十分確認したうえで行いましょう。
なお小児では、カテーテルの留置期間の延長による静脈炎のリスクは増加しないことから、合併症を発症しない限り、定期的に交換はしません4,5。
ルートの交換は7日以内の実施が望ましい
CDCのガイドラインでは末梢静脈ルート全体の交換について、「輸血、血液製剤、脂肪乳剤を使用していない場合は、持続して使用する輸液セット(ルート)は96時間以上の間隔で7日以内に交換する」「輸血、血液製剤、脂肪乳剤を投与した輸液セットは、投与開始から24時間以内に交換する」1と記載しています。
前述の通り、末梢留置カテーテルの交換時期は、72~96時間以内である必要はなく、静脈炎などの感染徴候がなければ留置は継続できます。
したがって、持続で使用する場合は、末梢留置カテーテルはルートとともに、7日以内に交換することが望ましいと考えます。
カテーテル留置期間中は皮膚の状態を毎日観察する
静脈炎の徴候を早期に発見し、すみやかに抜去することがPLABSIの予防に重要です。静脈炎や血流感染を予防するために、挿入部位の発赤、仏痛、腫脹、紅斑、排膿といった皮膚の状態を毎日観察したり、ドレッシング材の上から触診したりしましょう。
交換の時期を検討するために、カテーテルを被覆しているドレッシング材に日付を記載しましょう(図1)。留置後96時間以上経過している場合は、特に注意深く観察しましょう。
皮膚傷害や出血などがある場合は、ガーゼ型ドレッシング材を使用します。ガーゼ型ドレッシング材で被覆した場合においても、挿入部位の観察は毎日実施する必要があります。皮膚傷害や出血の程度、挿入部位の皮膚の状態を毎日観察し、ガーゼ型ドレッシング材は毎日交換しましょう。

- 1.CDC:Guidelines for the prevention of intravascular catheter-related infection.
http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/guidelines/bsi-guidelines-2011.pdf(2015.5.20アクセス)
2.BandJD,MakiDG:Steel need les used for intravenoustherapy.Morbidity in patients wit hematologic malignancy.Arch Intern Med 1980;140:31-34.
3.佐藤昭裕,他:末梢静脈カテーテルによる血流感染症の現状.日本環境感染学会誌2015;30(1):1-5.
4.GarlandJS,etal.:Peripheral intravenous catheter complications in critically ill children:A prospective study.Pediatrics1992;89:1145-1150.
5.GarlandJS,etal.:Infectious complications during peripheral intravenous therapy with Teflon catheters:A prospective study.Pediatr Infect Dis J 1987;6:918-921.
※この記事は『エキスパートナース』2015年7月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。