おさえておきたいこと

テレナーシングの概念とその普及背景
●ICTを活用し、健康づくり支援や疾病予防、在宅療養者への支援等を可能とする看護活動
●高齢者、医療的ケア児のほか医療過疎地域や離島の人々への健康支援、COVID-19拡大に伴う対面しない形での健康見守り支援として、 ニーズが高まっている

テレナーシングは、 情報通信機器を用いてさまざまな人々を対象に実践できる “第3の看護”

 テレナーシングは、臨床看護・訪問看護に次ぐ“第3の看護”といわれる新たな看護の提供方法です。その特徴は、直接対面せずに看護を提供することにあります。

 定義としては、「情報通信技術(ICT:Informa-tion and communication technology)と遠隔コミュニケーション(Telecommunication)を通じて提供される看護活動」¹です。従来の電話相談は、ICTを使用していないため、テレナーシングには含まれません。

 テレナーシングには、看護師から利用者へのテレナーシング(Nurse to People、N to P)、遠隔モニタリングを併用したテレナーシング(Telemonitoring based Telenursing、TM-based TN) 、看護師同士の遠隔相談やカンファレンス(Nurse to Nurse、N to N)などがあります。

 テレナーシングでは、健康な人々へは健康づくりを向上する支援として、また、職域などでは疾病予防や職場のメンタルヘルス支援として、そして慢性疾患や障害をもつ在宅療養者へは、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの看護支援リハビリテーション支援、介護者への介護相談や支援などが可能です。

長期的な療養支援としてニーズが高まってきている

 近年急速に注目されるようになった理由には、次のようなものがあります。

 第1に、わが国では慢性疾患をもつ高齢者数が急増し、長期にわたる療養支援の重要性が増していることです。これらの人々に、従来の外来看護や訪問看護に加え、テレナーシングを行うことで、遠隔地から看護職による保健指導やメンタリング*を提供できます。

 それにより、健康相談を行い、病状の増悪徴候などを観察でき、安定した療養が可能となります。

 また、医療過疎地域や離島などに暮らす人々への健康支援としてのニーズもあります。 加えて、第2に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大があります。これにより、利用者から訪問看護師の訪問を控えるよう要請されることが起こり、テレナーシングが力を発揮する機会が増えました。また、コロナ陽性者の自宅療養や宿泊療養中の健康見守り支援としても、直接対面しないテレナーシングへのニーズが高まっています。

*【メンタリング】知識や経験をもつ人が、それをもたない人に対して親身に相談にのること。

1.日本在宅ケア学会編:テレナーシングガイドライン.照林社,東京,2021:4.

在宅ケアの新しいシステム「テレナーシング」の実施に必要なこと

この記事は『エキスパートナース』2022年4月号の記事を再構成したものです。
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