SDGsの概要
●SDGsとは「持続可能な開発目標」を意味する
●持続可能でよりよい世界をめざすために、すべての国が行動するための2030年までの17の普遍的な目標が定められている
「貧困」「飢餓」「保健」「教育」などが17の目標として設定されている
最近、テレビなどを見ていると、図1¹に示したような虹色の円形のバッジやポスターを見かけませんか?これは、SDGs(エス・ディー・ジーズ)推進のロゴからとったカラーです。
SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能でよりよい世界をめざすための2030年までの国際目標です。Sustainable Development Goalsの頭文字をとったもので、日本語にすると、「持続可能な開発目標」という意味です。
最近では、SDGsを学ぶためのボードゲームやすごろくなどもあり、子どもから大人まで幅広い世代に認知されてきています。
SDGsには、「地球上の誰1人として取り残さない(leave no one behind)」というスローガンのもと、低・中所得国のみならず、先進国自身も含めたすべての国が行動するための普遍的な17の目標があります。
それは、「貧困」「飢餓」「保健」「教育」「ジェンダー」「水・衛生」「エネルギー」「成長・雇用」「イノベーション」「不平等」「都市」「生産・消費」「気候変動」「海洋資源」「陸上資源」「平和」「実施手段」です²。
看護に大きな影響を与える「保健」はSDGs 3の目標で、すべての人に健康と福祉がいきわたることがテーマです。そこでは、下記に示した例3のような、こまかいターゲットが決められています。
<SDGs 3(「すべての人に健康と福祉を」)の目標におけるターゲットの例>
- 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
- すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
- 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
- 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
(文献3より一部抜粋して引用)
SDGsと看護の関係
●看護師は「保健(SDGs 3)」だけでなく、「貧困(SDGs1)」や「教育(SDGs4)」に対しても大きな影響を及ぼす
●SDGs達成のために看護師はなくてはならない存在であり、看護の発展は、SDGsのさまざまな目標の達成に貢献する
看護師は、 SDGs達成のためにいちばんに社会に声を届けることができる存在
看護師は人が産まれる現場から、子どもの学びの場、人々の社会活動の場、療養者の療養時、そして終末期の場まで常に個人や集団に寄り添いケアを提供しています。このように、SDGs 3の目標達成に看護師は不可欠な存在です。
また、看護師はSDGsにおける他の目標にも貢献しています。
例えば、看護師は子どもの発達障害、虐待、家庭内暴力(DV)、若年層の出産などから「貧困」の問題にいち早く気づける存在であり、必要な人を社会制度や支援団体につなげることができます。
また、障害をもつ子どもが安心して教育を受ける機会がもてるように学校保健の現場でも看護師は活躍しています。
このように健康の社会的決定要因と称される「貧困(SDGs 1)」や「教育(SDGs 4)」に対しても看護師の仕事は大きな影響を及ぼします⁴。
そして、SDGs達成の妨げになる要素を見つけたとき、いちばんに社会声を届けることができるのが看護師なのです。
看護の発展は、ジェンダー平等や雇用の促進など、 SDGsに貢献する
2020年から始まった新型コロナウイルスの感染症の拡大で、看護師をはじめとする医療職者が果たしている重要な役割を、世界の多くの人々があらためて感じたと思います。しかし、看護師は人々の健康を守るだけの存在ではありません。
女性が多い職業である看護師が活躍することは、女性の社会的な進出や、地域社会でのリーダー力が高まり男女平等を促進します。また、社会の成長や雇用の促進、経済成長に貢献します。
イギリスのグローバルヘルスに関する議員連盟は、看護師への投資はトリプル・インパクトと言い、「保健(SDGs 3)」「ジェンダー平等(SDGs 5)」「成長・雇用(SDGs 8)」の3つに直接的に貢献すると結論づけています⁵。
SDGs達成のためには、 看護師1人1人にリーダーとしての役割が求められる
今後、SDGs達成のために看護師はなくてはならない存在です。そのためには、看護師は「教育」「トレーニング」「研究」に意欲をもち、常に前に進む必要があります。また、看護師が日ごろ実践していることは外部からはなかなか見えず、社会の保健政策の決定や意思決定に看護の視点が反映されていないのも現実です。
SDGs達成のために看護師のなかからこそ、政治や非医療者ともコミットできるリーダーが求められています。
現在、看護職者を取り巻く問題は数多く存在しているのも事実です。人材不足、看護職者に対する社会の過小評価、権限の制約、継続的な教育、復職への課題など、盛りだくさんです。特にコロナ禍では、看護師の離職と人材の不足が問題となりました。
今こそ、看護師をはじめとする医療従事者が適切に評価され活躍できる社会をめざし、看護師1人1人がリーダーとなり存在を強く訴えていく必要があります。
- 1.国際連合広報センターホームページ:SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン.
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/
2.外務省 国際協力局 地球規模課題総括課:持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割(令和2年9月).
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_gaiyou_202009.pdf
3.外務省ホームページ:我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 仮訳.
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf
4.日本看護協会ホームページ:看護師:主導する声 持続可能な開発目標の達成 2017年国際看護師の日 抜粋和訳.
https://www.nurse.or.jp/nursing/international/icn/katsudo/pdf/2017.pdf
(上記はすべて2024.7.20アクセス)
5.All-Party Parliamentary Group(APPG)on Global Health:Triple Impact-how developing nursing will improve health,promote gender equality and support economic growth.
https://www.who.int/hrh/com-heeg/digital-APPG_triple-impact.pdf(2021.3.20アクセス)
「医療・看護の知っておきたいトピック」シリーズの記事はこちら
この記事は『エキスパートナース』2021年5月号の記事を再構成したものです。
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