VRを活用した看護教育・研修の最前線と最新事例②
「医療・看護の知っておきたいトピック」シリーズの記事はこちら
VRとは
●専用機器の360度カメラによって撮影された映像を視聴することで、 仮想現実を限りなく実体験に近いものにすることができる技術である
●看護の分野でも患者目線や患者が体験している内容を再現し、感覚として体験するプログラムとして活用
IT技術の革新により、バーチャルリアリティ(VR)に関する話題やニュース、さらにはVRプログラム開発が近年増加傾向にあります。
VRをテーマにしたテレビ番組では、看護師研修に取り入れている紹介やVRの今後の可能性などについて解説されていました(『ヒューマニエンス 40億年のたくらみ』2022年8月2日放送回「“バーチャル”無いものをあると思える力」、NHK BSプレミアム)。
他メディアでも、VRに関してさまざまな情報が流れています。
本稿では、「VRとは何か」「看護界でVRが注目されるようになった背景」について解説します。 さらに、筆者が実際に取り組んだVRプログラム開発について紹介し、今後の看護教育や臨床における活用について考察します。
VRゴーグルで仮想世界へ
VRとは「仮想現実」のことであり、「現実ではないが、限りなく実体験ができる」環境を提供してくれる技術です。具体的には、専用の機器(ヘッドマウントディスプレイ、通称「VRゴーグル」、図1)を装着することで、その仮想世界を体験することができます。

図1のように両目をピタッと覆うことで、目の前にはその場の情景ではなく、つくられた世界が広がります。さらに、視野も360度なので、顔を動かすと没入感を味わうことができます。
それはテレビ画面を観ているのとは異なる、目の前のつくられた世界に自身がすっぽり入っている感覚であり、限りなく実体験に近いものです。
患者目線をVRでリアルに体験
看護の基本では、「患者の立場に立つ」ということが強調されます。患者に接するときには「患者目線で」「患者の気持ちを理解して」対応することが求められます。
ただ、理屈ではわかっていても、患者の立場や気持ちを100%理解することは不可能です。
そこで、患者目線や患者が体験している内容を再現し、感覚として実体験するプログラムとしてVR技術の活用が進められてきました。
例えば、認知症の患者が実際に見ている風景をVRで再現したプログラムがあります。また教育・研修においても、VR技術を用いることでよりリアルな体験ができるため、実践に役立っています。
昨今、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大以降、教育・研修においてその需要が増大しています。
米国・ジョンズホプキンス大学の医学部や看護学部では、学内演習にVRを導入しています。 同大のWEBサイトではDNP(Doctor of Nursing Practice)プログラム*の学生が、救急外来でのアナフィラキシーショックに関する演習に、VR技術を活用している様子が示されており、新たな、費用対効果の高いトレーニング形態として紹介されています1。
*【DNPプログラム】米国における看護学の博士号の1つ。看護実践を重視した課程となっている。
- 1.Johns Hopkins University:SCHOOL OF NURSING INTRODUCES A NEW,COST-EFFECTIVE FORM OF TRAINING:VIRTUAL REALITY.
https://hub.jhu.edu/2021/03/12/school-of-nursing-virtual-reality/(2024.11.18アクセス)
この記事は『エキスパートナース』2022年12月号の記事を再構成したものです。
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。