医療従事者が運営し、さまざまな発信をしている「メディッコ」。多職種連携について、具体的にどんなことをしているか情報共有しました。第3回は電話対応のすれ違いから生じる、コミュニケーションエラーについてです。

場面1

病棟看護師が「Aさん(患者)、 術後の痛みが強いのでリハ室でのリハはなしでお願いします」とリハビリテーション室へ電話を入れたが、リハビリテーション自体が中止になったものだと勘違い。本当はベッドサイドのリハビリテーション依頼だった。

場面2

外来の予約変更電話が患者さんからかかってきたけれど、クラークが不在。担当外の看護師で対応し、電子カルテ上で予約を取り直す。しかし、不足分があり、担当クラークが電話のかけ直しをする。

すま

すま

作業療法士、12年目。大学病院勤務。看護師さんの顔と名前が覚えられず苦悩している。いつも誰かを探している。

あみ

あみ

助産師、8年目。周産期母子医療センター、総合病院産科での勤務経験あり。現在は助産院勤務。他職種のなかでは薬剤師や栄養士、ソーシャルワーカー、保健師とのやりとりが多い。

うめだ

うめだ

管理栄養士、6年目。給食委託会社から整形外科・内科クリニックへ転職。現在は、医師、看護師、柔道整復師、理学療法士、医療クラークとのかかわりが多い。

S.O

えすおー

薬剤師、9年目。中小病院勤務薬剤師。看護師さんとのやりとりが多い。企業勤務時代に電話の取り方を鍛えられた。

よくある、他職種間での電話の行き違い

すま(作業療法士)  看護師さんからリハビリスタッフへの電話で、行き違いはよくあります。お互い時間がないなか、電話でやりとりをしますし、担当どうしの連絡ではなく、別の人を介して伝えられることも多いです。そうするとよけいにずれて話が伝わりますよね。

あみ(助産師) 他職種との電話での行き違いはよくみられますよね。電話をしても、患者対応中や会議中だったりすると極端に短い言葉だけで伝えたり……

 そうするとやっぱり勘違いが起こって、後から「そういうことじゃなかったのに……」と間違いが発覚して、ガックリすることもあります。

うめだ(管理栄養士) 私のところでは、基本的にクラークが電話に出るようにしてくれていますが、受付対応や会計対応で手が離せない場合、看護師が電話対応をしてくれるという状況です。クリニックなので、忙しいときは多職種が連携して対応する場面は多いですね。

S.O(薬剤師) 薬剤師も、ドタバタと忙しいなかで行う電話のやりとりは、抜け漏れが非常に出やすいと思います。電話では相手の顔や状況が見えないので、非常に気を遣いますよね。

 例えば、うちの病院で採用している薬剤は後発品だけど、電話では聞き慣れている先発品の名前が出たりとか、薬剤絡みの電話はエラーの温床になりやすそうです。

電話対応のコミュニケーションエラーの対策や、実際の工夫は?

すま(作業療法士) みなさん、なんだかんだ電話対応の場面は多いですよね。僕が気をつけていることは、電話を受ける人は、言葉通りの意味で受け取るのではなく、どういう意味かを確認することです。こうすることで、例で挙げたようなずれを防ぐことができると思います。

 例えば「〇〇ということですね?」と確認をするなどです。みなさんのところはどうですか?

うめだ(管理栄養士) 私のところは、どのスタッフが電話に出ても患者さんに同じ対応ができるように、就職後のカリキュラムのなかに電話対応の項目があります。初診の方、再診の方、予約のキャンセルなど、さまざまな場合を想定して、電話対応のポイントをスタッフで共有します。

 実際にスタッフどうしでロールプレイ研修も行っています。あとは、電話で患者さんから受けた内容で、情報共有が必要だと思ったことは、電話やりとりだけでなく、電子カルテも併用して記載するようにしていますね。

S.O(薬剤師) クリニックなどのように、ある程度決まった流れのものは、マニュアルやロールプレイ研修などで連携ミスがかなり減りそうですね。私も受け手になる場合、要点は復唱するように気をつけています。

 また、忙しいと用語が略語になりがちですが、できる限り正確な用語を用いるようにしていますね。すれ違いはどうしても発生しうるものなので、発生した際のリカバリーが効くように、日ごろから雑な言葉は使わず、丁寧な言葉で対応するようにしています。
 個人的には、男性は声が低く、聞き取りにくいこともあるかと思うので、通話時は若干声のトーンを上げています。

あみ(助産師) そんな配慮まで……!薬剤師さんとの電話でのやりとりは、特に緊張しますね。似ている薬の名前やカタカナで言いづらい、聞き取りにくいものが多いほか、mLとmgの違いで大変なインシデントとなってしまうこともありますから……。
 S.Oさんの言うように、丁寧な言葉の選定は大事ですね。私は、忙しいときほど連携ミスが起こりやすいと思うので、日ごろから5W1HやSBARを意識しながら相手に伝えるようにしています。

すま(作業療法士) 日ごろの情報共有も大事になってきますね。ところで、SBARってどんなものでしたっけ?

あみ(助産師) SBARは、アメリカで医療安全と質の管理を目的に開発された『TeamSTEPPS』というチームワークトレーニングで用いられている報告のためのツールです。
 具体的には、以下の4つの頭文字をまとめたもので、それぞれ、漏れなく情報を相手に伝える手がかりになっています。最近はさらに詳しく、「Identify(報告者、対象者の同定)」と依頼、要請の確認のために「Confirm(口頭指示の復唱確認)」が追加され、「ISBARC」ともいわれるようになっているみたいです!

S:Situation(状況、状態)
B:Background(背景、経過)
A:Assessment(評価)
R:Recommendation(依頼、要請)

すま(作業療法士) そうしたツールがあるんですね!すべて1つひとつ確認しながらやると難しそうですけど、基本的な報告の流れとして、ポイントをおさえたやりとりができそうですね。

この記事は『エキスパートナース』2020年7月号連載を再構成したものです。
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【第4回】コミュニケーションエラー②目標やゴールのずれ、優先順位の違い
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