ストーマについての「これだけは知っておきたい!」という“基礎のギモン”から、現場から寄せらた“実践的なギモン”までお答えします。今回は緊急手術でストーマ造設を行う際のマーキングについて。必要性や待機手術時と比べて注意すべきことを紹介します。

この記事は『エキスパートナース』2022年7月号特集を再構成したものです。
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マーキングを行わないと装具を安定して貼付できなくなる場合がある

 マーキングを行わないことで、手術創からの距離が近すぎてストーマ装具が貼付できない肋骨や腸骨に近くて座位になると装具が浮いてきてしまうなど、安定した装具の貼付ができなくなり、皮膚障害の原因となる可能性があります1

 また、ストーマサイトマーキングを実施することで、ストーマ早期合併症の重症度を低くするはたらきも期待できます

 これらのことをかんがみて、緊急時でもマーキングを行う必要があります。

 私の経験ですが、マーキングの必要性について理解している医師は、術中の手術室からマーキングの相談をしてくれることもあり、手術室でマーキング(造設位置の決定)を行うこともありました。

 しかし、医師も異動することがあり、医療チームのメンバーが変わることは皆さんも経験があるのではないでしょうか?あるいは、数年前に研修医だった先生が術者として執刀することもあります。
 一緒に働く外科医も変わることがあるからこそ、日ごろから、マーキングの重要性について外科医と共通した認識がもてるようにディスカッションしておくことが重要です。

緊急時は、腹壁が通常とは異なる

 待機的手術と比べて特徴的に注意したほうがよいことは、腹壁の状況が通常とは異なる可能性が高いということです。

 消化管穿孔や腸間膜動脈閉塞症では腹膜炎を併発していることも多く、患者さんは強い痛みを感じています。腹壁は緊張して硬く、「腹直筋を確認するためにおなかを触る」ということが、難しい状況である場合も少なくありません。

 また、腸閉塞を併発している場合には、腸管内容物で腹部の膨満が強く、平常時には確認できる腹壁のしわが消えているなど、通常とはまったく異なる腹壁の形状であることもあります。

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