免疫関連有害事象(irAE)のケア

ケアのポイント

● irAEの早期発見には、「いつもと違う」という患者さん・家族の気づきと医療従事者の適切な判断が重要。

 免疫チェックポイント阻害薬によるirAEは、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法においても、グレード3以上は10%程度にすぎません(表2)。

 しかし、進行非小細胞肺がんに対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法の効果・安全性を評価する「JCOG2007試験」では、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法群に148例(全体では295例)が登録された時点で、治療関連死亡が11例(7.4%/肺臓炎4例、サイトカイン放出症候群3例、心筋炎1例、心筋炎疑い1例、敗血症1例、血球貪食症候群1例)が認められ、試験は中止となりました4

 irAEは、「いつ発症するかわからず(表1・表2)」「症状はあいまいなことが多く(表1)」「複数の臓器に発症することもある」ため、早期発見のためには患者さん・家族の「いつもと違うな」という気づきと、その報告を受けた医療従事者の適切な判断が重要になってきます。

 FDAは、潜在的に重症な有害事象に対応するための戦略としてRisk Evaluation and MitigationStrategy(REMS:リスク評価・リスク緩和戦略)を2007年に法制化しました。REMS プログラムの4つの柱は、以下のとおりです5

①医師用のガイドライン作成による治療の標準化
② 医療従事者のコミュニケーション・プランとしてirAEチェックリストの作成
③ 患者さんへの説明を充実させるための患者説明文書と、常時持ち歩くための「持ち歩きカード」の作成(図1
④ 安全な使用を保証する方策として、医療従事者研修会と受講証明書の設定

 日本においては、日本臨床腫瘍学会が2018年からがん免疫療法に関する包括的教育プログラムを行っており、ようやく日本においてもirAEへの体制が整えられました。

 免疫チェックポイント阻害薬による治療を行ううえで、看護師の役割はきわめて大きく、常に勉強していく姿勢が求められています。

図1 患者用持ち歩きカードの例
持ち歩きカード
患者はこれを常に携帯し、異常をきたして緊急で治療を受ける場合に受診医療機関で提示することで、適切な処置を受けることができる。
(画像提供:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社)
1.厚生労働省:免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアル.
https://www.pmda.go.jp/files/000245271.pdf(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ掲載、2024.3.20アクセス)
2.オプジーボ®ホームページ(運営:小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ):適正使用ガイド 単剤療法版.
https://www.opdivo.jp/system/files/2023-08/OPD_guide.pdf(2024.3.20アクセス)
3.前掲2:適正使用ガイド 併用療法版.
https://www.opdivo.jp/system/files/2023-08/OPD_guide_combi.pdf(2022.11.20アクセス)
4.日本臨床腫瘍研究グループ:非小細胞肺がんを対象としたニボルマブ+イピリムマブ併用療法の多施設共同臨床試験に係る現状と重要な注意事項について.
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/0428/20230428.pdf(2024.3.20 アクセス)
5.American Pharmacists Association:White paper on designing a risk evaluation and mitigation strategies(REMS)system to optimize the balance of patient access,medication safety,and impact on the health care system.JAm Pharm Assoc 2009;49(6):729-743.

がん治療・ケアの最新知識【第6回】新しい分子標的治療薬:血管新生阻害薬

この記事は『エキスパートナース』2023年1月号特集を再構成したものです。
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