適切な排泄ケアのために重要なのが排尿アセスメント。排尿状態、排泄動作、既往歴、生活環境、影響要因についての情報収集のポイントをお伝えします!
●排尿アセスメントをとおして、どのようなケアが必要か考えて計画を立てる。
●患者さん自身による排尿のセルフケアを促して、排尿自立を支援する。
尿意は、膀胱に一定量の尿がたまった際に膀胱内圧が上昇し、脳幹の排尿中枢を刺激することで起こります。
排尿は、排尿筋の収縮や尿道括約筋の弛緩が関与していますが、この過程に何らかの障害があると失禁につながります。そのため、排尿パターンを理解したうえでのトイレ誘導が必要となります。
排尿アセスメントでの情報収集のしかたは?
排尿障害のタイプに合わせた適切な排尿ケアを提供するためには、排尿アセスメントが必要です。
排尿アセスメントとは具体的には、ケアを計画する前に患者さんの排尿状態と排泄行動を確認してアセスメントを行うことです。
アセスメントするためには、①排尿状態、②排泄動作、③既往歴、④生活環境、⑤影響要因の5項目の情報を収集することが大切です。
①排尿状態のアセスメント
排尿状態を知るために、排尿記録を開始します(【第11回】の図1参照)1。
排尿記録をつけることで、①排尿のパターンがわかりやすくなる、②排尿障害のタイプが推測できる、③尿量や失禁量で適切なおむつの選択ができる、④提供した排尿ケアの効果がわかる、といったメリットがあります。
②排泄動作のアセスメント
次に排泄動作のアセスメントを行います。排泄動作のどの過程が障害されているのかを確認し、どのような機能訓練が必要かを検討し、ケアを立案します(図1)。
図1 排泄動作のアセスメントのための観察ポイント

③既往歴のアセスメント
1)神経系に症状を引き起こす疾患の有無
神経系に症状を引き起こす疾患は、排尿障害が現れやすいため、既往歴を確認します(下記参照)。
<神経系に症状を引き起こす疾患の既往歴のアセスメントのポイント>
骨盤内手術の有無
▶低位前方切除術、子宮全摘術、前立腺全摘術など
脳血管障害の有無
▶脳梗塞など
脳神経疾患
▶パーキンソン病、多発性硬化症など
糖尿病(糖尿病では末梢神経障害が起こりやすく、神経因性膀胱などになりやすい)
脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニア・頸椎症やその術後など
2)服用している薬剤の種類や服薬状況
尿量に関係する薬剤、蓄尿や排出に関係する薬剤を服用していないかを確認します(下記参照)1。
<排尿障害をきたす主な薬剤>1
排尿障害治療薬による排尿障害
●抗コリン薬(ポラキス®、バップフォー®、ベシケア®、ステーブラ®、ウリトス®)
● コリン作動薬(ウブレチド®、ベサコリン®)
● α遮断薬(ハルナール®、フリバス®、ユリーフ®、エブランチル®)
疾患治療薬による排尿障害
●精神科治療薬:抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬
●神経疾患治療薬:パーキンソン病治療薬、認知症治療薬
●呼吸器疾患治療薬:気管支拡張薬、喘息治療薬、鎮咳薬、感冒薬
●消化器系治療薬:ブチルスコポラミン臭化物
●抗アレルギー薬:抗ヒスタミン薬
●循環器系治療薬:α遮断薬、抗不整脈薬
●緩和医療使用薬:麻薬、睡眠薬
●抗悪性腫瘍薬
(文献1より一部改変して引用)
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