認知症の終末期について解説。症状・病態の変化や、予後予測ツール、終末期に行いたいケアについて詳しく解説します。

前回の記事:認知症の終末期に現れるサイン

認知症の終末期における症状・病態の変化

 重症認知症から終末期に向かう変化の概略としては、失禁(FAST「ステージ6」、こちらの記事・表1参照)、長期臥床(FAST「ステージ7」、同・表1)を経て、摂食嚥下障害、誤嚥性肺炎などの感染症意思疎通困難となって行きます(図1)。

図1 重症認知症から終末期への進行

重症認知症から終末期への進行の図
肺炎・褥瘡は経過の途中もしくは最終段階で散発する

 終末期の症状は疼痛よりも呼吸困難が多いことが特徴的ですが、ほかにも、嚥下障害、咳嗽、発熱、浮腫、褥瘡、喀痰、および便秘なども多くみられます。また、主治医が治療すべきと考えている症状は、呼吸困難、嚥下障害、喀痰、褥瘡、およびせん妄などです1
 これらをまとめると、摂食嚥下障害、肺炎と長期臥床に伴う苦痛症状が認知症終末期の症状といえます。

認知症の終末期における苦痛の評価

 苦痛の評価は、本来は主観であるべきですが、認知症の終末期は意思疎通が困難になっていることが多いため、客観的に行わざるをえません。当院でも用いているPain Assessment in Advanced Dementia(PAINAD)は、呼吸、ネガティブな発声、顔の表情、ボディランゲージ、および慰めやすさの5項目を評価します(表12

 たとえ入院場面であっても、長く介護をしてきた家族や慣れた介護施設スタッフなどの評価を聞くことができれば、さらに精度が上がることになるでしょう。

表1 Pain Assessment in Advanced Dementia(PAINAD)

Pain Assessment in Advanced Dementia(PAINAD)の表
5項目を足した数字が、NRSを用いたペインスケールとなる
(文献2より引用。表の日本語訳文はValidation済み〈Sekine R et al.Under article submission〉)

認知症の予後予測ツール

 重度認知症での6か月以内の死亡率を予測するツールとしては、Mortality Risk Index(モータリティリスクインデックス〈MRI〉)があります(表23

表2 Mortality Risk Index(MRI)

表2 Mortality Risk Index(MRI)
合計が12点以上なら、6か月以内の死亡率は70%
(文献3より引用、一部改変)

 12項目の合計が12点以上なら6か月以内の死亡率70%と見積もられます。 また、MRIに、ナーシングホーム*1への入所が最近であること褥瘡の多発体重減少なども追加したAdvanced Dementia Prognostic Tool(アドバンスドディメンシアプログノスティックツール〈ADEPT〉)4もあります。

*1【ナーシングホーム】=医療と福祉が一体となった福祉施設。重度の寝たきり高齢者などが対象。

認知症の終末期ケア

 認知症患者の終末期においては、意思決定が困難な場合があります。そのような場合に重要な課題は、経口摂取が不能となった場合の選択です。
 欧米の研究では胃瘻を含め経管栄養をしても生命予後の延長5、誤嚥性肺炎の予防6などは望めず、苦痛を増やすだけ7であり、行うべきではないという流れになっています。

 経口摂取が不能となった場合、人工的水分・栄養補給法(artificial hydration and nutrition:AHN)*2をしなければ生命予後は1~2週間、末梢輸液・皮下輸液投与下では2~3か月、経管栄養投与下では月単位から年単位と見積もることができます。

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