鎮静を伴う処置後は、病棟での急変に注意が必要です。今回は鎮静薬を適切にするために重要な、バランス麻酔について解説します。
鎮静薬使用の難しさ
「鎮静を安全に行うためには、投与方法のプロトコルを決めて毎回同じ方法で投与すればよいのではないか」と考える方もいるかもしれませんが、現実にはなかなか困難です。
その1つ目の理由は、「鎮静」を必要とする検査や処置の種類によって、求められる鎮静方法が同じではないということです。
例えば、小児のMRI検査では痛みはないため意識をとるだけで十分ですが、上部消化管内視鏡では咽頭への強い刺激があるので意識をとるだけでは不十分です。さらに、“診断的”内視鏡と“治療的”内視鏡では、内視鏡自体の太さ、処置の時間、途中で加わる侵襲も異なるため、鎮静方法を変える必要があるのです。
2つ目の理由は、鎮静薬の作用には個人差が大きい、ということです。
例えば、静脈麻酔薬でもあるプロポフォールの場合、5%の患者さんが意識を消失する血中濃度は1μg/mLですが、95%の患者さんの意識消失が得られる血中濃度は4μg/mLと、じつに4倍もの開きがあります(40歳の患者さんの場合)。
ある患者さんで最適な鎮静が得られた同じ量を別の患者さんに使用しても同じ結果は得られず、過鎮静になることも不十分な鎮静になることもあり得るのです。
鎮静における「バランス麻酔」の考え方
皆さんは「全身麻酔の3要素」をご存じでしょうか?3要素とは「鎮静」「鎮痛」「不動化」で、意識をとるための鎮静薬、痛みをとるための鎮痛薬、体動を抑制するための筋弛緩薬を組み合わせて麻酔を行う方法は「バランス麻酔(図1)」と呼ばれ、現代の全身麻酔の基本的概念となっています。
図1 バランス麻酔の考え方と調整の例

1つの手術のなかでも、“大きな侵襲が加わる場面”と“それほど大きな侵襲はない場面”がありますが、バランス麻酔においては、侵襲度に合わせて鎮痛薬の量を増減して痛みに対処すれば、鎮静薬の量はほぼ一定で済みます。
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