白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など、血液がんの最新の治療・ケアについて解説。今回は化学療法の副作用である妊孕性低下に対する、妊孕性温存治療を取り上げます。がんを患った若年患者さんを支えるために看護師ができることとは?

妊孕性温存治療にはどんなものがある?

 妊孕性温存治療は、原疾患の治療の主治医によって、妊孕性温存を考慮することが可能であると判断された場合にのみ、行うことができます(図1)。がんの治療においては、まず原疾患の治療を行うことが最優先です。

図1 妊孕性温存のアルゴリズム(ASCO2013)

図1 妊孕性温存のアルゴリズム(ASCO2013)
(文献1より改変して引用)

 女性の場合、妊孕性温存治療には主に、卵子凍結、胚(受精卵)凍結、卵巣組織凍結があります。
 ASCO2013では、がん・生殖医療におけるすでに確立された妊孕性温存療法をして、胚(受精卵)凍結保存卵子凍結保存などを挙げています。 これらの療法は、患者さんの年齢、パートナーの有無、悪性腫瘍の種類・治療法、卵巣転移の可能性などの要素を考慮して選択します。

卵子凍結保存
●経腟的に長い針(採卵針)で卵子を単体で吸引回収して凍結する

受精卵凍結保存
●患者さんの卵子とパートナーの精子を受精させた受精卵を凍結する

卵巣組織凍結保存・移植
●ASCO2013の報告では未確立の技術とされているが、凍結卵巣組織を用いた出産例が報告されている
●卵巣移植のリスクには、卵巣組織内の微小残存がん病巣の問題がある。慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)の患者さんにおいて組織所見で卵巣組織に悪性細胞を認めなかった症例に対して、RT-PCR法によって白血病マーカーが陽性だった報告もあり、適応疾患を慎重に選択する必要がある

治療のタイミングに注意

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