患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回は、手術を必要とする糖尿病患者さんの心理についての研究です。
糖尿病患者さんが手術を受けるとはどういうこと?

糖尿病患者数の増加を背景に、糖尿病患者さんが、がんや難病などに罹患し、侵襲的な治療を受けることが増えています。
術前、患者さんは手術に対する不安を抱いているなかで、糖尿病のため術後合併症を引き起こしやすい状況を説明されます。術後は、回復のための栄養管理において糖尿病の病態との調整が必要となります。そして退院後は、非日常から日常へ、糖尿病の自己管理を再構築する必要性に迫られます。
よって、手術を受ける糖尿病患者さんへの看護は、周術期のみならずその後の生活を見越した包括的な視点での特別な継続看護が必要となります。
そこで、手術を受ける糖尿病患者さんがこのようなめまぐるしい変化のなかでどのような経験をしているのかを調査し、手術経験を経たうえで新たに自己管理を再構築していく患者さんを支える看護について検討しました1。
「術前」「術直後・術後回復期」「退院直後(日常性の取り戻し期)」に分けて解説していきます。
本研究は、以下の倫理的配慮のもとに実施されたものです。
●対象者には文書で研究目的・方法・参加の自由・拒否や途中辞退の自由・個人情報の保護などを説明し、同意をいただいて実施しました。
●面接時には、精神的心理的な状態に常に注意を払いながら行いました。
研究の方法
疑問(調べたこと)
●手術を必要とする糖尿病患者さんは手術を経て、自己管理をどう再構築している?
研究対象
●消化器手術を受ける糖尿病患者さん 16名(うち1 名は糖尿病罹患を認識していなかったため除外)。男性11名、女性4名。年齢は59~82歳(平均69.3歳)
●糖尿病歴は2~37年
●術後入院日数は9~40日(平均23日)
研究方法
●手術を要する状態になってから今までの経験(手術を受ける、もしくは受けた)について語ってもらう
●外来および病棟での看護援助、医師の診察・説明の場面に同席(参加観察)
発見1:術前”の認識・行為・感情の変化
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