患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回は、ボディイメージの変容をきたした頭頸部がん患者さんの心理についての研究です。

外見上の変化を、患者さんはどう受け止めている?

ボディイメージの変容をきたした頭頸部がん患者さん

 頭頸部がんは、頭頸部(脳や脊髄、眼窩内を除く顔面頭蓋から頸部にかけての部位)に発生した悪性腫瘍です。

 なかでも口腔領域の局所進行がんでは、顎骨や広範囲の軟組織の切除を必要とし、外科切除によって大きな欠損を生じた場合には、皮膚や骨などを移植し修復する再建術が行われます。
 これにより組織の多くは再建されますが、神経の断裂や組織の不足により、咀嚼、摂食嚥下、発音だけでなく動的・静的な表情のゆがみなどの機能障害が残ることも多く見られます。そのため、頭頸部がん患者さんは外見上の変化に大きな悩みを抱え、心理面にも大きな影響を及ぼします。

 通常、がん患者さんの看護援助では、はじめに身体的な苦痛の緩和に視点が注がれ、ボディイメージに関することを含めた心理的な問題は特定の状況においてしか注意が払われない傾向があると言われています 1。そこで、頭頸部がんの患者さんが捉えるボディイメージを「外観的・機能的変化に対する主観的な思い」と定義し、明らかにしたいと考えました。

本研究は、以下の倫理的配慮のもとに実施されたものです。
●本研究は、研究倫理審査委員会の承認を受けて行っています。
●対象者には口頭および文書で研究目的・方法・参加の自由・拒否や途中辞退の自由・個人情報の保護などを説明し、同意をいただいて実施しました。
●面接は、身体的・心理的な状態に常に注意を払いながら行いました。

研究の方法

疑問(調べたこと)
●頭頸部がん患者さんは自分のボディイメージをどう捉えている?

研究対象
●頭頸部がん術後に形成外科的手術を受けた患者さん3名(女性3名、50~70代)

研究方法
●インタビューガイドを作成し、本研究に同意が得られた患者さんに半構成的面接を行いデータ収集
●データは内容分析(Berelson,B)の手法で分析
*【半構成的面接】ある程度の質問項目をあらかじめ決めておくが、対話の流れに応じ、表現や順序を変更して質問する面接法。

発見:他者の視線や、自身の身体をコントロールできないことに悩んでいる

 頭頸部がん術後に形成外科的手術を受けた患者さんは、【自分を人前に出せない】【自己表現手段を閉ざされた自分】【人より劣る身体機能】【自分の顔半分はないのと同じ】【顔へのこだわりの緩和】という5つのボディイメージを抱いていました。

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