高齢運転者を取り巻く状況をふまえた“結論”示す

 日本老年学会は4月15日、『高齢者の自動車運転に関する報告書』を公表しました。
 認知症高齢者の危険運転による重大な交通事故の増加を受け、現在、交通事故の危険性が高い高齢者に対しての免許返納促進などさまざまな対応がとられています。このような背景をふまえ、高齢運転者を取り巻く複雑な状況の解決策を検討するために取りまとめられました¹。認知症と診断された人はそうでない人と比べ、違反が1.25倍、人身事故が1.48倍多いことがわかりました¹²。
 また、免許の自主返納数等は増加していますが、2018年の都道府県別75歳以上の免許保有人口当たりの返納率は最高が7.25%(東京都)、最低が3.19%(茨城県)と、地域によって最大2.27倍の差があることがわかっています³。これらの内容をふまえ、同学会は6つの結論を示しました¹。

『高齢者の自動車運転に関する報告書』の結論

1.高齢運転者は、運転免許更新の際などに適切な運転技能のスクリーニングが必要である
2.単に免許を返納するのではなく、行政や地域から適切な支援を受けつつ運転中止へ向けた準備を進める必要がある
3.運転中止に伴う生活範囲の狭小化によって、認知症等を発症する危険性が上昇するため、代替手段の検討を運転中止前に行うべきである
4.運転を継続する場合の効果的対処を普及していく必要がある
5.事故リスクを減少する多層的な取り組みが求められる
6.高齢者の危険運転を減らすためには、個別性も考慮し、社会全体で多面的な取り組みをさらに推進する必要がある

(文献1を参考に作成)

1.日本老年学会:高齢者の自動車運転に関する報告書.
http://geront.jp/news/pdf/topic_240415_01_01.pdf(2024.8.12アクセス)
2.警察庁:平成30年度警察庁事業:「高齢運転者交通事故防止対策に関する提言」の具体化に向けた調査研究に係る認知機能と安全運転の関係に関する調査研究.
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/koureiunten/menkyoseido-bunkakai/cognitivef/cognitivef_report.pdf(2024.8.12アクセス)
3.村松容子:高齢者による運転免許返納率の都道府県差. ニッセイ基礎研究所.
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/61145_ext_18_0.pdf(2024.8.12アクセス)