検査・治療の帰室後の急変に注意!今回は、消化器内視鏡検査・治療を行う理由や、内視鏡的拡張術、内視鏡的粘膜剥離切開術など帰室後に急変・合併症が起こりやすい内視鏡検査の種類、帰室後に現れる症状について解説します。

この記事は『エキスパートナース』2017年12月号特集を再構成したものです。
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消化器内視鏡検査・治療を行う理由

 消化器内視鏡検査には大きく分けて経口的に行われる上部内視鏡検査と、経肛門的に行われる下部内視鏡検査があり、それぞれの目的に応じて行われます。
 内視鏡治療も多岐にわたり、狭窄した消化管の拡張、ナイフや高周波を用いた病変部位の切除、止血や静脈瘤の破裂防止などを目的に行われます。

内視鏡検査・治療の種類

<消化器内視鏡検査>
●上部内視鏡検査(経口的:食道・胃・十二指腸・小腸)
●下部内視鏡検査(経肛門的:小腸・大腸)
●内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)
●カプセル内視鏡検査

<内視鏡治療>
●内視鏡的止血術(凝固・局注・結紮等)
●内視鏡的拡張術
●内視鏡的粘膜剥離切開術(ESD)
●ポリープ切除術(ポリペクトミー)
●内視鏡的粘膜切除術(EMR)
●内視鏡的胃・食道静脈瘤硬化療法(EIS)・結紮術(EVL)

もともとのリスク状態

●出血傾向
●抗凝固薬や抗血小板薬を服用中

注意したい消化器内視鏡検査・治療

 消化器内視鏡検査・治療の一般的な流れは以下の通りです。

①検査室に入室
②適切な体位をとる
③鎮痛薬や鎮静薬を投与する
④内視鏡を挿入し、検査や治療を行う
⑤鎮静拮抗薬投与後、帰室

 帰室後に急変・合併症が起こりやすい内視鏡治療をいくつか紹介します。

内視鏡的拡張術

 内視鏡的拡張術図1)は、消化管狭窄の解除方法で、拡張バルーンやブジーを使用し内側から押し広げます。消化管を物理的に押し広げるため、治療中の裂創により出血や穿孔を起こしやすくなります。

図1 内視鏡的拡張術

内視鏡的拡張術

内視鏡的粘膜剥離切開術

 内視鏡的粘膜剥離切開術(ESD、図2)は、良性の粘膜病変だけでなく早期がんなども含め、特殊ナイフを用いて一括切除する治療です。広範囲の切除が可能で、病理診断が詳細に行えます。
 しかし、ループ状のスネアを用いて切除を行うポリープ切除術(ポリペクトミー)や内視鏡的粘膜切除術(EMR、図3)に比べ、手技に熟練を要するため、出血・穿孔など偶発症のリスクも高くなります。

図2 内視鏡的粘膜剥離切開術(ESD)

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