ルート確保のコツ①高齢患者の場合には、皮膚を固定しながら針を進める

 高齢の患者さんは、「動脈硬化の進行」や「血管の蛇行」「皮下脂肪の減少」などによって、血管が逃げやすい状態にあります。こうした場合には穿刺方向と逆方向に皮膚を伸展させると、血管が逃げるのを最小限にすることができます(図1)。

図1 血管の固定

 しかし、穿刺後すぐ皮膚の固定を解除すると、留置針が血管外へ逸脱してしまいます。そのため、皮膚を固定したまま外筒が進められるような準備をしましょう。

 具体的には、穿刺前に外筒と内筒をわずかに動かしておくと、皮膚を固定した手を離すことなく片手で外筒を進めることがより容易になります。

ルート確保のコツ②浮腫・肥満がある場合は、“血管のありそうな部位”を指で押さえる

 浮腫・肥満の患者さんは先に示した通り、体表面から血管までの距離が遠く、穿刺が難しい状況にあります。 そこで、駆血に加え血管がありそうな部位を指で軽く押さえると血管が浮き出る場合があります。

ルート確保のコツ③ショック状態の患者の場合は、他の投与方法も検討する

 ショック状態にある患者さんでは交感神経が緊張し、 末梢血管が収縮することからルート確保が難しくなります。場合によっては中心静脈、骨髄、気管内投与などを検討する必要があります。くわしくは、【第3回】を参照ください。

ルート確保のコツ④血管を怒張させるための体位も重要

 血管が見えにくいとき、体位を整えることも重要です。例えば右側臥位時に、左上肢は心臓より上になっています。この状態では血流量が減少するため、 血管が見えにくくなることがあります。このように、体位によって血管が怒張しにくくなることがあります。

 穿刺時は、「いかに血管を怒張させ、穿刺に適した状況を作るか」ということが重要となります。下記のようなことを行うとよいでしょう。

●穿刺部を心臓より低くする
●適度な強さで駆血する
●関節の屈曲角度を変える
●手の開閉運動(クレンチング動作)を行う
●体位を整える
●保温する
●患者の緊張を緩和する
●室温の調整を行う

クレンチング動作

ルートの固定:適切な長さを設定し、不要な三方活栓は外す

 ルート確保が難しい患者さんの場合、末梢留置カテーテルが抜けたり、接続部が外れたりしてしまった場合の再確保は大変です。そうならないよう、確実に固定することも重要です。ルートが抜けたり、接続部が外れたりする原因として、重力や外力が挙げられます。

 重力に関しては、ルート自体の重さで留置針が抜けやすくなるため、ルートの長さを長くし過ぎないことや、不要な三方活栓を外す必要があります。

 また外力に関しては、ルートが何かに引っかかることにより、末梢留置カテーテルが抜けたり接続部が外れたりすることがあります。患者さんのADLを考慮し、適切なルートの長さと固定を行いましょう。

 固定の際は、カテーテル刺入部が観察できるように、透明のフィルムドレッシング材を使用します。また、ルートが何かに引っかかっても抜けにくいように、ループを作って固定します(図2)。

図2 ルートの固定
1.小松由佳:静脈注射がうまくなる! 技術と手ぎわのかんたんポイント.月刊ナーシング 2014;34(6).16-50.
2.岡元和文 編:輸液管理とケアのQ&A ─こんなとき、どうしたらいいの?─.総合医学社,東京,2007:58-59,61,70-71.

【第2回】知っておきたい!ルート確保のキホン(12月5日配信予定)

この記事は『エキスパートナース』2015年7月号特集を再構成したものです。
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。