日常的に行う末梢留置カテーテルの穿刺や管理について、それらを「なぜ行うのか」を解説していく連載。第3回は、急変場面での穿刺部位は「肘正中皮静脈」を第一選択にする理由を紹介します。
急変場面での穿刺部位は「肘正中皮静脈」が第一選択
●急変場面では短時間でルートを確保しなければならないため
●「肘正中皮静脈」は直線に走行しており確実に穿刺しやすいことから、急変時の第一選択となる
急変場面での選択基準は、「確実性」が最も重要
急変場面では、生命維持のために“じっくり”末梢静脈ルートを確保する時間的猶予はありません。まず行わなければならないことは、確実に挿入ができる血管を早急に選択することです。
そのため、付近に神経などがあるものの、直線に走行しており、ショック時でも確認しやすいため確実な穿刺が容易な肘正中皮静脈が、 急変場面では第一選択となります。また、大量に輸液などを投与できるように、できる限り太い留置針を選択しましょう。
末梢静脈でルートが確保できなければ、【第1回】にもあるように中心静脈、骨髄、 気管内投与という選択肢を並行して検討する必要もあるでしょう。
末梢静脈は動脈と異なり、患者さんによって走行が異なります。急変場面でも、血管、神経の走行などといった解剖を理解しておくことで、すみやかなルートの確保がより容易になります。【第1回】を参考にし、穿刺に適した状態をつくりましょう。
可動性のある部位を選択せざるを得ない場合は皮膚傷害に注意
急変場面でルートを確保した場合、ときに関節などといった可動性のある部位が選択されることがあります。
その場合、関節の屈曲によるカテーテルの抜去や輸液・薬剤の投与の中断が起こらないように、シーネなどを使用し関節の動きを制限する必要があります。その際、シーネにより骨突出部が圧迫され、皮膚傷害を発生する可能性が高いため、除圧と定期的な皮膚の観察が必要です。
また、シーネと一緒に骨突出部にクッション性のあるものを使用すると、皮膚傷害を最小限にすることができます(図1、2)。
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