歩行補助具・車椅子の選定

 自立支援を達成するために、移動は可能な限り対象者が自立して行える方法を選択します。そのためには、対象者にとって適切な歩行補助具や車椅子などは、評価結果に基づいて選定することが必要になります。

①杖

 杖にはいくつか種類がありますが、一般的なT字杖よりも4点杖など支持基底面が広い杖のほうが安定性は増します(図2)。一方、杖は重く、操作性は低下するために歩行速度を制限してしまい、持ち運びで難渋することもあります。一方、可動式4点杖は通常の4点杖よりも支持基底面は狭いものの操作性が高く、利用しやすい場合もあります。

図2 主な杖の種類

②歩行器

 歩行器は主に車輪がついているタイプ(歩行車)と固定型の2種類に大別されます(図3)。歩行車は比較的歩行速度を制限しない一方、段差の昇降には不向きであり、自宅内での利用は難しいことが多いです。
 一方、固定型は歩行速度を制限するものの、小さな段差があっても利用可能であり、安定性も高くなります。適応される対象者の特徴として、パーキンソニズムなどを有し突進傾向がある場合、失調症状などで動作中のふらつきが強い場合は歩行車よりも固定型が適切な場合があります。

図3 主な歩行器の種類

③車椅子

 車椅子の種類は分類によってさまざまですが、一般的に利用されることが多いものを図4に示します。 

図4 主な車椅子の種類

 標準型と介助型の違いは、タイヤの大きさです。介助型では自走するためのハンドリムが不要なだけでなく、タイヤも小さくすることで軽量化を図り、介助者の負担が軽減されます。6輪型は小回りが利くため、自宅内での利用に適しています。モジュール型は対象者の体型に合わせてサイズや様式の変更が可能ですが、接続部品などが多く、標準型よりも重いというデメリットもあります。ティルト・リクライニング型は座位保持が困難な対象者で適応になりやすいです。

 特に片麻痺を有する対象者が車椅子自走で移動する場合は、下肢も操作に用います。車椅子座位の状態で下肢の操作が可能か否かを評価しておくことは重要です(図5)。

図5 片麻痺者の車椅子自走の評価

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