症状を理解すると、看護の展開がみえてくる

 難病看護は「難病によって生じる生活障害に対して、医療・保健・福祉の支援とともに介入し、生活・人生設計の再構築を支援するアプローチ」3)です。
 つまり、生活障害をきたす症状について理解することで、支援のニーズが導かれ、看護としての方策を検討することにつながるのです。

神経難病の 症状は多彩で 個人差がある

神経の支配領域=症状の違い

 神経難病による症状は、侵される神経系の支配領域が障害を受けることによって生じます。身体には、神経が張りめぐられされたネットワークが構築されているため、身体の至る部分が障害を受ける可能性があります。神経難病の代表的な症状として、

●運動障害
●感覚障害
●呼吸障害
●自律神経障害
●排泄障害
●摂食嚥下障害
●コミュニケーション機能障害
●認知機能障害

などが挙げられますが、これらは疾患によって生じるものと生じないものがあります。

生活障害=症状と「生きかた」がかかわる

 また、症状の発生機序が同じであっても、その感じ方や起こりうる生活障害は、個人差が大きいです。
 だからこそ、当事者1人ひとりから学び、それを経験として蓄積して、相違点から「どう対応するか」のヒントを導き出す必要があります。

経過に合わせた支援のためにチームで協働する

 難病看護の最大の魅力であり、もっとも難しい点は「一時点でのかかわりではない」ということではないでしょうか。

療養行程と経過は対応している

 難病看護では、図2に示した「療養行程」という考え方を大切にしています。それぞれの時期の概要と支援課題については、Part 3 (※書籍掲載)で詳しく解説します。

 当然ながら、療養行程ごとの支援者は、所属や役割によって異なります。
 例えば、医療処置が必要となって訪問看護の利用が始まると、それぞれの担当者が、療養行程の途中からチームに加わってきます。このように、各支援者が療養行程のなかで分担しつつ、つながりをもって伴走することが求められるのが、難病看護の難しい点です。

 そのため支援者には、自らが担う療養行程はどこで、それまでどのような経過をたどってきたのか、いわば、患者さんの「人となり」を理解することが求められます。
 また、チームメンバーが交代するなかでも、チーム全体の方向性をそろえることが重要です。そのヒントは、経過に合わせた支援のなかでみつかります

 本書では、療養行程における「よくある当事者の発言や症状」から、状況を把握し、アセスメントの視点を提供したうえで、「どう対応するか」につなげることをめざして解説します。

1)難病情報センター:病気の解説・診断基準・臨床調査個人票の一覧 疾患群別索引(神経・筋疾患).
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5347(2024.7.30.アクセス).
2)中山優季,板垣ゆみ,原口道子,他:難病患者の生活実態による新たな指定難病の類型化とその特徴~平成29年難病患者の生活実態全国調査から~.日難病看会誌 2021;26(2):173-184.
3)中山優季,原口道子,川村佐和子:難病看護の専門性と特徴~難病看護の定義に向けて~.日難病看会誌2016;21:54.

神経難病の病態・ケア・支援がトータルにわかる
中山優季、原口道子、松田千春 編著
髙橋一司 医学監修
B5・248ページ、定価:4,070円(税込)
照林社

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。