介護施設でのスキントラブル好発部位(尾骨・仙骨部)の褥瘡に対するスキンケア事例
演者:浦 美奈子先生
(医療法人社団千木福久会 福久ケアセンター 看護部長)
当センターでは介護の質を向上させるため、排泄の状態の改善や、褥瘡発生率の低下をめざしています。褥瘡を予防するため、皮膚保護・乾燥防止、排泄管理、除圧、ポジショニングといった取り組みを進めています。
紙おむつとパットは尿量と交換回数で選定しています。交換時に排泄物が漏れていることに気がついたら、パットの吸収量を測定し、適正なパッドに変更したり、交換時間を変えたりします。
排泄物の後ろ漏れにより褥瘡が発生した事例
Aさん 94歳
介護度:要介護3、障害自立度:C2、認知症自立度:Ⅲb
2023年7月に右大腿骨転子部粉砕骨折(骨接合術)。70歳代で大動脈瘤の手術を経験。
HDS-R:14点
153cm、45.3kg
●受傷前はなんとか身の回りのことはできていたが、退院時に介助を希望。入院中からおむつ排泄となった。尿意は曖昧で、トイレには誘導が必要。
本人の意向:このままのんびり過ごしたい。困りごと、心配、不安はない。
家族の意向:みんながいる中で楽しく生活してもらいたい。少しでもできることが増えるとよい。
<褥瘡関連計画>
臀部、仙骨部に発赤、皮膚がズクズクしている(湿潤)。おむつ、パットの汚染の定時確認、皮膚の清潔保持(入浴のほか汚染時は陰部臀部洗浄)を行う。長時間の同一体位は避け、体位変換、除圧を行う。

上記の事例では、皮膚の湿潤、排泄物の後ろ漏れによる汚染が原因で褥瘡が発生。パットの後ろ側に尿がたまらないようにするため、「アテント Sケア 前側吸収 おしりさらさらパッド」(大王製紙株式会社)を使用することにしました。
褥瘡リスクが高い場合に加え、皮膚が脆弱、栄養状態が低下、基礎疾患(糖尿病、心疾患など)がある、日常生活自立度がB2~Cレベルといった場合には、適正なパッドの早期変更を考えていく必要があるかと思います。
座位姿勢を正しく保つために
当センターでは排泄チェック表を活用。利用者ごとに、どの時間帯に何を交換するかを記載しています。使用商品一覧やおむつの交換カートも使用。用品は1か所にまとめて置き、必要なものを部屋に持って行くというスタイルです。


病院と比べ、施設では車いすでの座位状態が長いので、臥位での肢位保持、体位変換に加えてホールでの座位姿勢を正しく保つことが難しいと感じています。円背で仙骨座りになってしまい、尾骨・仙骨部への圧がかかりやすいのです。
そこで、除圧クッションを使用することに。ソフトナース®(アルケア株式会社)を椅子サイズにカットして使っています。
姿勢とともに、紙おむつやパットを有効に機能させることが重要。当センターのリハスタッフは研修で実際に水分を含んだ紙おむつパットを装着し、動きにくさを体験したうえで、ポジショニングの提案をしています。

スキントラブル予防に向けて多職種で連携を
「アテント Sケア 前側吸収 おしりさらさらパッド」の吸収力はしっかりとしていますが、1回尿量300~400mLを超える場合は交換回数を増やす必要がありました。また、軟便があふれるケースもあり、課題となっています。
加えて、尾骨・仙骨を含む臀部の汚染を軽減し湿潤を防いでくれますが、保湿・スレ防止・除圧といったケアを組み合わせるとよりよいでしょう。費用面については、商品ごとの価格に関心を持つことは大事。ただ、商品の効果を最大限に取り入れて有効に使うことで、全体の費用を抑えられると考えています。
まずスキントラブルは起こさないことが大切です。基本的な褥瘡予防を多職種が共同で行い、ケアは機を逃さず適正な方法で実施しましょう。用品を無駄なく効果的に使うことも大事です。
特に重要なのは、対象となる方の快適性です。利用者の幸せに資するために、1つ1つのケアを多方面から多くの人で実践していきたいと思っています。
座長・真田先生より
介護をする方の専門性も大事にしながら、療養者の方のQOLを下げないようにケアを行うという点に、管理者としての姿勢を学ばせていただきました。そのために、排泄ケアが非常に大きな役割を担うことを共有していきたいですね。
ディスカッション:実践的で効果的なケア方法とは?
尿のにおいはIADを見極めるポイントになる?
真田先生 皆さんの発表を聞き、褥瘡の要因となるIADの予防が最も大事だと感じました。尿のにおいはIADを見極めるポイントになるのでしょうか。尿臭がすると感染が疑われますが、高齢者だと発熱しないこともありますよね。
浦先生 尿臭はきちんと見ていかないといけないポイントだと思います。パッドを超えるような尿量が多い方は尿臭も強いので、訴えがなくても積極的にかかわっていくことが必要だと思います。
皮膚のチェックの重要性
真田先生 スキンケアの基本となる、皮膚のチェックについてはいかがでしょうか。
仲上先生 皮膚を観察することは非常に大事です。光沢がある皮膚は表面がダメージ受けるのはもちろんですし、浸軟と浮腫も重なっています。パッドを使って湿潤が予防されていくと、しわも見えてきて腫れもひくというところで、適用も見極められ、パットの効果の評価にも使えると思います。やはり皮膚の評価、チェックは大事ですね。
多職種連携で注意すべきポイント
真田先生 新しいパッドを導入するときには、何に注意すべきでしょうか。例えば、関係者をどう動かすか。また、多職種連携を考えたときの注意点など、教えていただけますか。
仲上先生 高機能だと、通常のパッドよりはコストが高くなると思います。そのコストに見合った効果があることがわからないと、事務の方も取り入れにくいですよね。導入前後でどう変わるのか、機能と効果を可視化することが必要です。そして何よりも、患者さんのQOLがよくなることを評価できるような連携が大事だと思います。
真田先生 IADの程度を判定する客観的なスケールが、事務の方との共通言語となるのでしょうか。
仲上先生 仰る通りです。IADではIAD-set、褥瘡においてもDESIGN-R®2020があり、 客観的に皮膚の評価ができるようになってきています。数量的なデータとともに、患者さんの症状を評価するとよいかと思います。
真田先生 多職種連携において共通言語は大事ですよね。多職種のなかで排泄ケアを充実させていく点について、いかがでしょうか。
浦先生 ほかの職種の方に言語が通じないというのは本当にそう。当センターでチーム会をつくった理由もそこにありますね。例えば、おむつ交換は介護の方はプロフェッショナルですが、起きた皮膚の状態をみたり、この先の予見をできるのは看護師。連携することで成果を上げられます。それぞれが専門とする業務のなかに、共通の理解を落とし込む必要があるのではないでしょうか。
おむつの使い方の教育
真田先生 おむつのあて方が ナースによってバラバラ、という話を聞くことがあります。おむつの使い方の教育はどうされていますか。
佐々木先生 褥瘡対策講習会があり、そのなかに失禁やおむつのことも含まれています。それとは別に、新人看護師対象の研修会や講習会があり、実際におむつを手に取り、人形にあてるという実践も行われています。臨床ですぐ使える技術を習得してもらうという点を重視して指導しています。
真田先生より
2025年を目途とした地域包括ケアシステムの構築の実現がめざされているなか、病院、施設、在宅訪問ケア、訪問介護ステーションの連携が必要となります。この連携のためにも、共通言語の必要性を強く感じています。IADのツール、褥瘡のツールなど、客観的な指標で症状を評価していかなければなりません。どんなおむつを使っていたのかなどをお互いにきちんと知らせて連携を取り、患者さんのQOLをよくしていく。その大切さを、未来に伝えていければと思います。
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