本が大好きな看護師のおともさんが、“あなた”に寄り添った本を紹介するブックセラピー企画。看護師さんのさまざまなお悩みに合わせて、相談者にぴったりな書籍を教えてくれます。
【第1回】「あなたの心を守る」視点で選ぶ、若手看護師さんへの本
看護師のおともかんごしのおとも
救急外来部門・シミュレーションセンターで主任を務める看護師。実家も今の家も、本だけで丸々1部屋を使ってしまっているほどの本好き。@99emergencycall
看護師2年目のSさん
新人時代の毎日緊張していた状態から、少し落ち着いてきた頃。ある程度仕事はできるようになってきたと感じながらも、「病院で働くのはあまり向いていないかも」という思いが芽生え始めています。看護師を辞めたいとまでは思わないけれど、特にやりたいことがあるわけでもなく。漠然とした不安やしんどさが積み重なり、休日も心から楽しめない……。
帯やおまけ漫画にも注目!看護師のかげさんからのメッセージ
白石 今回は、看護師としての将来に不安を感じていて、少しお疲れ気味の方向けの本を選んでいただきたいです。
看護師のおとも
これはどちら側に寄り添うか迷いますよね。看護師の仕事の醍醐味をお伝えできるといいのか、それとも疲れたよね、ちょっとリラックスして休みましょうねとするのか。でも、やっぱりまずは今の疲れを少し和らげることが先でしょうね。(部屋の本棚の奥からガサゴソ)……となると、刺さるのはこういう本かなぁ。まずは『現役看護師かげさんの 明日を生き抜く看護メンタル』をご紹介したいと思います。
現役看護師かげさんの 明日を生き抜く看護メンタル
かげ 著・イラスト
KADOKAWA
四六判
1,540円(税込)
白石 看護師のかげさんが書かれた本ですね。
看護師のおとも
帯にはそもそも看護師に向いてない、看護が楽しくないってシクシク泣いている猫が描かれているんですが、裏を返すと「もうダメだ~」から「いけるかも!」というメッセージになっているんですよ。かげさんの本の、こうした帯の作りがすごく好きで。あと、これ気づきました?表紙を外すと、おまけ漫画があるんですよ。これもまたいいんですよね。
白石 えぇ、それは気づきませんでした!こんなところにも細工があったんですね!
看護師のおとも
そうそう。患者さんの不安に寄り添う看護師の姿を描きながら、「看護をするということは 正解のない問題に向き合うということ」という言葉で締められている。個人的にはもっと目立つところに載せてほしいくらい大切なメッセージだと思います。この本自体が、「看護師しんどいなと思っているあなた」に向けて書かれているので、看護師を続けていけるかな、どうしようかなって悩んでいる人にはぴったりだと思います。
ときには「逃げる」ことも必要、そう教えてくれる言葉たち
看護師のおとも
励ましさえも重たく感じる方には、この1冊。『逃避の名言集』という本です。
逃避の名言集
山口路子 著
大和書房
文庫判
748円(税込)
白石 タイトルがすごい、逃避特化型なんですね。
看護師のおとも
帯にも「逃げなさい」ってデカデカと書いてあるんです。「特に深刻な事情があるわけではないけれど私にはどうしても逃避が必要なのです」というメッセージから始まります。山口美智子さんという作家が、さまざまな分野の名言を集めて、それに対する考察を載せている本です。「人づき合い」から逃げたい、「家庭」から逃げたい、「仕事」から逃げたい……など、目次に書いてあります。文庫本サイズですが文章量はそれなりにあるので、読むときに少し重めではあるかな。
白石 目次でパラパラっと、気になる名言のところから読み進めるということもできそうですね。
看護師のおとも
いいと思います。例えば、看護師って看護技術や業務の「自立」という評価を受けることが多いですよね。でもこの本には「『自立したい』なんて無意味なことです」という言葉があって。女性の自立の文脈から、そもそも人は誰かを必要とするし、「本当は自立などというものは人間にとってはあり得ないのではないか」という話になるんですが、こういう言葉にひどくとらわれがちなときに、無意味なことだったのかと少し肩の力が抜けるかもしれません。この本の意図と看護師の自立の意味は少し違うので、すべて当てはまるわけではないけれどね。
白石 なるほど。ちょっと哲学的な要素も含まれる感じですね。
看護師のおとも
そうですね。あとは、看護師にもおなじみのキューブラー・ロス(※)の言葉も収録されていて、「いのちを無駄にしたと後悔しないように。生きなさい」という言葉で章が締められているんです。医療者として知っている人の言葉に出会えるのも、この本の魅力ですね。だから、この本が好きっていうのもある。
※参考文献 https://www.chuko.co.jp/bunko/2020/01/206828.html
白石 それはアツイですね……!ただ、なかにはちょっと強い言葉も含まれているようなので、読むときは選んだほうがよいでしょうか?
看護師のおとも
たしかに、逃避の名言集なので、なかには「死ぬのはいつでもできるから、そんなつまんないことはしなくていい」みたいな言葉もあるんですよ。まだ動くエネルギーが残っているときに読むほうがいいかな。逃げるためのエネルギーすら残っていないときには、重たすぎると感じるかもしれない。だから、特にひどく落ち込んでいるときというよりは、漠然とした不安やモヤモヤした気持ちを抱えている時期。そんなときに、この本が少し気持ちを和らげてくれて、なにかのヒントをくれると思います。
今回、看護師のおともさんが紹介してくれた本
日々、患者さんに寄り添うあなたにも、やさしく寄り添うものがあってほしい。今回紹介した本たちが、そんなあなたの心の“おとも”になれることを願っています。
看護師のおともさんに、「悩みに合う本を教えてほしい」という方を募集中。
下記URLよりご応募ください。
※掲載の有無はエキスパートナース編集部で判断し、掲載有無の結果は事前にご連絡はいたしません。
https://questant.jp/q/book_therapy_otomo
【第3回】「これから看護師として働くのが不安」そんな新人ナースの一歩を支える本(1月11日配信予定)
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