本が大好きな看護師のおともさんが、“あなた”に寄り添った本を紹介するブックセラピー企画。看護師さんのさまざまなお悩みに合わせて、相談者にぴったりな書籍を教えてくれます。今回は、「生涯役立つ、手元に残しておきたい本を知りたい」という相談です。

看護師のおともかんごしのおとも
救急外来部門・シミュレーションセンターで主任を務める看護師。実家も今の家も、本だけで丸々1部屋を使ってしまっているほどの本好き。@99emergencycall
看護の本に限らず、読んだ本はすぐ売ったり、人にあげたりして、インプットとアウトプットを絶え間なく続けたいと思っています。そんな人にも「この本は生涯役に立つから持っておいたらいいよ」と、おともさんがおすすめできる本があればぜひ教えてほしいです。
生涯手元に置いておきたい本、何を選ぶか
白石 今回は「生涯役立つ本」というテーマですね。おともさんにとって、どうしても手元に置いておきたいと思える本とはどんなものでしょうか。

看護師のおとも
そうですね、本を読んで売ったり、あげたりして、次の本を買うというサイクルはすばらしいと思います。このようなスタイルでも、なかには「これだけは手放せない」と思える本との出会いがありますよね。間違いなくおすすめしたいのが、これです。よいしょ、『独学大全』です。(本を見せながら)厚さは5cmぐらいあります。

独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
読書猿 著
ダイヤモンド社
A5変形判
3,080円(税込)
白石 けっこう厚い本ですね!レビューブックより分厚いですか(笑)。

看護師のおとも
レビューブックより厚いんじゃないかな(笑)。800ページぐらいあります。『絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』というサブタイトルがついた、まさに学ぶことに特化した本です。僕はこれを紙の本と電子書籍の両方で持っています。意図的にそろえました。
まず1つ言っておきたいのが、普通に読み物として面白いんです。勉強法や、勉強を続けるための方法、質の高い学習をするためのスキルが55個も詰まっています。ただ方法論を紹介しているだけではなくて、“無知くん”と“親父さん”という登場人物が出てくるんですよ。
白石 おぉ、なんだか物語のような展開があるんですね。

看護師のおとも
そうなんです。無知くんは名前の通り何も知らないので、親父さんに教えを乞いに行くわけです。その2人の掛け合いで、どうやって資料を探すのか、どう勉強を始めるか、学ぶ習慣をどう続けるかといったことが書かれています。恐ろしいくらいボリュームがあって、根拠もしっかりあって、端的に言って「やばい」本なんです。広く深く学べる。そして持っているだけで所有欲が満たされる。
白石 おともさんが「やばい」と言うってことは、相当ですね(笑)。でも、そんな充実した内容ならけっこういい値段がしそうですね。

看護師のおとも
これが驚くことに、税込3,080円なんです。このボリュームでこの価格は安いと思います。著者の読書猿さんはXでも発信をされている方で、知識の深さは「何者なんだろう」と思うレベル。でも本人はとても慎ましく、「自分は無知です」というような方なんです。今も学び続けていて、また新しい本を書かれているそうです。
理念をもった人の本に触れる

看護師のおとも
ビジネス書や自己啓発書などをいろいろ読んでいくと、書いてあることって最終的に同じようなことだったりするんですよ。だから、書いている人の人間性やキャラクターに惹かれて著者買いするようなものが、もしかしたら生涯役立つ本ともいえるのかもしれないですね。
そこで次に紹介したいのは、『覚悟の磨き方 〜超訳 吉田松陰〜』。幕末を生きた吉田松陰の言葉や考え方が現代語で書かれています。「この命をどう使い切るか。ついに志を立てる時がきた」という一文から始まります。

覚悟の磨き方 〜超訳 吉田松陰〜
池田貴将 編訳
サンクチュアリ出版
四六判
1,650円(税込)
白石 吉田松陰といえば、多くの偉人を育てた人物ですよね。どのような内容が書かれているんですか。

看護師のおとも
吉田松陰の簡単なプロフィールが冒頭にあり、志をどうもつのか、リーダーシップをどう発揮するのか、知識をどう身につけるかなど、彼の考え方や視点がわかりやすく書かれています。
読んでから、ほかにも吉田松陰関連の本をいくつか買いましたが、結局これが一番手元に残しておきたいと思える本になりました。自己啓発書のなかでも、自分に合う、刺さるものがあれば、それが推しの1冊になるんじゃないでしょうか。
白石 なるほど、何が書いてあるかはもちろん大事ですが、「誰が書いたのか」「どんな人が書いたのか」みたいなところも大切ですね。

看護師のおとも
そうなんです。「どんな思いを手元に置いておきたいか」ということも重要。自分と考え方やスタイルがマッチするか、あるいは反対に自分にないものを補ってくれる本か、そういう視点で選ぶのもよいと思います。
感性を磨く、心を豊かにする本

看護師のおとも
でも、勉強法や自己啓発だけではなく、感性が磨かれるような本もあっていいと思うんです。意外かもしれませんが、『世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話』という本もおすすめです。

世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話
ボブ・エクスタイン 著
藤村奈緒美 訳
エクスナレッジ
B5変形判
2,640円(税込)
白石 タイトルも表紙の写真も素敵ですね。ヴィレッジヴァンガードで売っていそうです。

看護師のおとも
これは世界中の75の書店から聞き書きした逸話集で、日本の本屋さんのことも載っています。世界各地の個性的な本屋さんで起きた、楽しくてほろ苦いエピソードが挿絵付きで紹介されています。例えばハーバードの書店ではこんなことがあったよ、といった具合です。僕は本屋さん自体が好きなのですが、この本を読むと世界中のいろんな本屋でちいさなドラマが生まれていることがわかり、世界の広さを本屋を通して知ることができるんです。
白石 本屋さんが好きな方には特に響く1冊ですね。

看護師のおとも
あと最後に紹介したいのが、『いつでもカービィ 勇気をキミに』という絵本です。これは本当に、マジで好きなので、機会があったらぜひとも読んでほしいと思っています。

© Nintendo/HAL Laboratory, Inc.
© SHOGAKUKAN
いつでもカービィ 勇気をキミに
ヒョーゴノスケ 絵
谷口あさみ 作
小学館
A6判
968円
白石 えっ、ゲームのカービィの絵本があるんですか!そんなかわいい本が!

看護師のおとも
ひと口食べれば勇気が湧いてくると言われている不思議な果実を探しに、カービィが冒険に出かけるストーリーです。先々でほっこりしたエピソードが展開されます。ページ数はそれほど多くないのですが、ラストが本当にすばらしくて……。あまり言うとネタバレになってしまうので控えますが、僕にとって特別な1冊ですね。
同シリーズのうち、このイラストを描いているヒョーゴノスケさんの作品『カービィのちいさな世界』『カービィとひとり時間』なども持っています。サイズはかなりコンパクトで、シリーズは11巻まで出ています。
インプットとアウトプットのバランス
白石 今回のお悩みは「インプットとアウトプットを絶え間なく続けたい」というものでしたが、そういう方へのアドバイスはありますか。

看護師のおとも
本を循環させるスタイルはとてもよいことだと思います。ただ、堅苦しい本だけでなく、自分の好きが詰まった本や心が落ち着く本など、いろいろな本との付き合い方があると思います。インプットとアウトプットを回すのも大事ですが、時には休むことも大切ですよね。
白石 たしかに、絶えず続けるというよりは、たまにはリフレッシュも必要かもしれませんね。

看護師のおとも
そうですね。逆に一度休んだり、まったく別のジャンルの本を読んだりすることで、思考がリフレッシュされて新しい気づきが生まれるかもしれません。普段行かない本屋さんの普段行かないコーナーに足を運んでみるのもおすすめです!
今回、看護師のおともさんが紹介してくれた本
『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』
『覚悟の磨き方 〜超訳 吉田松陰〜』
『世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話』
『いつでもカービィ 勇気をキミに』
日々、患者さんに寄り添うあなたにも、やさしく寄り添うものがあってほしい。今回紹介した本たちが、そんなあなたの心の“おとも”になれることを願っています。
看護師のおともさんに、「悩みに合う本を教えてほしい」という方を募集中。
下記URLよりご応募ください。
※掲載の有無はエキスパートナース編集部で判断し、掲載有無の結果は事前にご連絡はいたしません。
https://questant.jp/q/book_therapy_otomo
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