本が大好きな看護師のおともさんが、“あなた”に寄り添った本を紹介するブックセラピー企画。看護師さんのさまざまなお悩みに合わせて、相談者にぴったりな書籍を教えてくれます。
看護師のおともかんごしのおとも
救急外来部門・シミュレーションセンターで主任を務める看護師。実家も今の家も、本だけで丸々1部屋を使ってしまっているほどの本好き。@99emergencycall
看護師10年目のMさん
大学病院から中規模病院への転職、その合間に派遣で施設やクリニックでの勤務も経験しました。看護の仕事は自分に合っていると感じ、勉強も好きなほうです。周りには看護系大学院に進学して認定資格を取得する仲間もいて、「看護とはなにか」という漠然とした問いが心の中で大きくなってきました。学生時代にはあまり深く考えなかった看護の本質を、今あらためて学び直したいと感じています。
理論と実践をつなぐ、看護の本質を探る1冊
白石 10年のキャリアを経て、看護の本質を学び直したいと考えている方に向けて、おすすめの本を教えてください。
看護師のおとも
こういう波が来るときはありますよねぇ。さて、どの本がいいかな……(本棚を探しながら)あ、『現代看護理論 一人ひとりの看護理論のために』という本はいいですね。
現代看護理論 一人ひとりの看護理論のために
西村ユミ、山川みやえ 編
新曜社
四六判
3,080円(税込)
白石 おぉ、少し難しそうな本ですね。
看護師のおとも
看護理論というと、ナイチンゲールやバージニア・ヘンダーソンなど、さまざまな理論家の難解な内容を学ばなければならない、少しとっつきにくいイメージがありますよね。でも、この本は違います。実践から理論を捉え直し、理論を実践に活かすため、事例に照らしながら看護理論のエッセンスを紹介しているんです。
白石 10年の臨床経験がある方にとっては、具体的な事例があるとより理解しやすそうですね。推しの理論家が出てくるかも。
看護師のおとも
そう思います。10年間の臨床経験の中で、さまざまな実践を重ねてきた方だからこそ、理論的な裏付けを知ることで、「あぁ、あのときの判断は理論的にも正しかったんだ」という気づきが得られると思います。ただし、文章量は多く、8割が本文で2割が参考や引用を含む注釈という構成。なかなか読み応えのある内容です。
看護理論を身近に感じられる入門書
看護師のおとも
もう1冊は『看護の地図帖』ですね。看護理論家15人の著作から重要な言葉を抽出し、長い看護の道のりを進むための指針としてまとめられています。この本の企画意図として、「理論なき実践は盲目であり、実践なき理論は空虚である」というクルト・レビンの言葉が引用されています。看護理論をもう少し身近なものにしてほしいという想いからスタートしているんです。
ただ、発行元の出版社が現在存在しておらず、この本は図書館などでの閲覧をおすすめします。好きな本なんですけどねぇ……。
白石 貴重な本ですね!具体的にどんなテーマが扱われているのでしょうか。
看護師のおとも
「人間とは」「健康とは」「看護とは」という基本的な問いから始まり、「看護とは誰のためにあるのか」「看護師はどんな人なのか」といった本質的な問いを探求していきます。「豊かな看護実践者とは」「看護学教育の目的」、さらには「プライベートライフの充実」まで、幅広いテーマを扱っています。
看護の歴史から未来へ、アイデンティティを考える
『看護のアイデンティティ』もご紹介したいと思います。こちらは看護師の職業的アイデンティティに焦点を当てた本です。
白石 職業的アイデンティティとは、具体的にはどのような内容でしょうか。
看護師のおとも
看護師の歴史的変遷を踏まえながら、時代が変わっても変わらない看護の本質はなにか、役割の拡大に伴うアイデンティティの変化、そしてチーム医療の中での看護師の独自性について考察しています。
特に興味深いのは、タスクシフトが進む現代において「看護師でなくてもできる仕事」が増えるなかで、看護師としてのアイデンティティをどう捉えるべきかという問いです。歴史的な視点から現代の課題まで、幅広い視野で看護師という職業を考察できる内容になっています。どちらかというと、看護史というような、歴史とかルーツの話になりそうですね。
こちらも発行元が同じでもう出版社さんがないので、やはり本は欲しいときに買っておくものですね。
白石 この3冊は、今の時代にこそ、今のタイミングだからこそ必要な本ですね。
そうですね。後半の2冊は残念ながら入手困難かもしれませんが、図書館などで出合えたら、ぜひ手に取っていただきたい本です。10年という経験を経て、あらためて「看護とはなにか」を問い直したい方にとって、きっと新しい気づきを与えてくれるはずです。
今回、看護師のおともさんが紹介してくれた本
『看護の地図帖』(高橋照子 著、ライフサポート社、A4判)
『看護のアイデンティティ』(秋元典子 著、ライフサポート社、A5判)
日々、患者さんに寄り添うあなたにも、やさしく寄り添うものがあってほしい。今回紹介した本たちが、そんなあなたの心の“おとも”になれることを願っています。
看護師のおともさんに、「悩みに合う本を教えてほしい」という方を募集中。
下記URLよりご応募ください。
※掲載の有無はエキスパートナース編集部で判断し、掲載有無の結果は事前にご連絡はいたしません。
https://questant.jp/q/book_therapy_otomo