40歳頃から少しずつあらわれはじめる、更年期の諸症状。患者さんだけでなく、看護師さん自身も不調に苦しめられることが少なくありません。そこで本記事では、「かなでる女性クリニック日野」の院長である野木才美医師にインタビュー。女性ホルモンの一種である「エストロゲン」のはたらきから、変化の多い時期を少しでも健やかに乗り切るためのケア方法まで教えていただきました。
野木 才美 医師のぎ さいみ
かなでる女性クリニック日野 院長
山梨大学医学部卒業後、武蔵野赤十字病院産婦人科など複数の施設で産婦人科診療に従事。すべての女性が健やかで幸せに過ごせるように2024年7月、女性医師・女性スタッフによる「かなでる女性クリニック日野」を開院。
日本産科婦人科学会、日本専門医機構産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会、婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会、臨床細胞学会細胞診専門医、緩和ケア研修会終了、産業医。
女性の健康を守るエストロゲン
体内に存在するさまざまなホルモンのなかでも、主に卵巣でつくられるものを「女性ホルモン」と呼びます。女性ホルモンには2種類あり、そのひとつがエストロゲン。妊娠に向けて子宮内膜を厚くするほか、骨を丈夫にする、外性器・腟内の潤いを保つ、肌にツヤとハリを与えバリア機能を保つ、髪の毛の成長を促すなど、さまざまな役割をもっています。関節や血管の健康にもエストロゲンが関わっており、女性の生殖と健康には欠かせないホルモンだといえるでしょう。
更年期世代に起こる体調の変化
しかし40歳を過ぎる頃になると、エストロゲンの分泌量は急激に低下。閉経前後の10年間を「更年期」と呼びますが、この世代になると月経不順をはじめ、さまざまな身体の変化が起こりはじめます。
よく知られているのが、顔や身体が突然熱くなって汗が吹き出すホットフラッシュや、気分の落ち込み・いらだち、倦怠感。そのほかにも手指の腫れや関節の痛み、筋肉痛といった、一見更年期とは関係なさそうな症状があらわれる場合もあります。
またエストロゲンには、悪玉(LDL)コレステロールの生成を抑制したり、肝臓での回収を促す作用もあるため、分泌量が下がると動脈硬化のリスクも上がります。動脈硬化は心筋梗塞をはじめとする命に関わる病気に直結するため、注意が必要です。
更年期症状は個人差が大きい
症状が多岐にわたることや、その程度にも個人差が大きいことから、「更年期の苦しみを周囲に理解してもらえない」という患者さんも少なくありません。とくに早くから症状があらわれた場合には、更年期の症状だとは思わないまま婦人科以外を受診して、「異常なし」と診断されてしまうこともあります。
原因のわからない症状で苦しむ女性の患者さんがいらっしゃった場合には、看護師さんから婦人科の受診を一言すすめてもらえると、早期の改善につながるかもしれません。
エストロゲンを補うホルモン補充療法
更年期の諸症状に対する、代表的な治療方法がホルモン補充療法(HRT)です。その名の通り減少したエストロゲンを薬で補うという治療法で、内服薬のほか、シールタイプやジェルタイプの経皮薬を処方することもあります。
ただし、HRTには副作用があり、使い始めには不正出血や乳房の張り、吐き気などが起こることも。血栓症のリスクや、長期にわたって使用する場合は乳がんの発症率が上昇するという指摘もされています。
そのためHRTが難しい場合には、漢方薬で症状を緩和させたり、メンタルに変調がある方であれば向精神薬を処方するといった方法をとります。
エクオールのサプリメントを紹介することも
「ホルモン薬に抵抗がある」という患者さんに対して、当院ではセルフケアの一つとしてエクオールのサプリメントを紹介することもあります。
「エクオール」とは、大豆イソフラボンの一種である「ダイゼイン」が、腸内細菌のはたらきによって変化した成分。エストロゲンとよく似た構造をもち、体内でエストロゲンに似たはたらきをすることがわかっています。
1日10mgのエクオールを12週間摂取することで、ホットフラッシュの回数の低下や、目尻のシワ面積の広がりを抑えたという研究結果があります。また、女性ホルモン低下が背景にあると推測される手指の関節痛が改善されたという報告も。実際に摂取されている方は、気負わずに飲めると気に入って継続されている方が多いようです。
なお、日本人女性の約50%は腸内で大豆イソフラボンからエクオールを産生することができ、産生者は更年期の症状も軽いということがわかっています。半数の人は腸内で産生できないため、エクオールそのものを含むサプリメントを摂取するのがいいでしょう。
忙しい毎日でもできるだけ自分を労ろう
看護師さんの場合、更年期世代である40代から50代にかけては責任ある立場に就いている方が多く、心身ともに重圧を感じる場面が多くなりがちです。「年齢を重ねて疲れやすくなった」と思っていても、実はエストロゲンの減少によって起こる倦怠感かもしれません。
更年期症状を改善するには規則正しい生活を送ることも大切ですが、それが難しいのも看護師という職業。エクオールのサプリメントなども上手に取り入れつつ、できる限りご自身を労りながらお過ごしください。
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