20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
平和を守り抜くことは人間の生きることへの保障であり
よりよい看護の実践は平和であってこそ達成可能な課題である
足早に帰路を急ぐ人の流れが一瞬滞る場所。それは、あの大阪万博のシンボルとなった太陽の塔と並ぶ岡本太郎の代表作と言われる巨大壁画の下である。制作地メキシコを思わせる赤と黒を基調にした鮮やかな色調ではあるが、モチーフは原爆の炸裂する瞬間と、悲惨のどん底から再生する人々の姿である。(中略)
戦争や「平和」への脅かしのサインに極度に過敏でありたい。平和を守り抜くことは人間の生きることへの保障であり、よりよい看護の実践は平和であってこそ達成可能な課題である。
「病気で死ねるということは平和だから」と言った筋ジス青年の言葉を、いま、ガザ地区で流されている無辜(むこ)の人々の血とともに重く受け止めることは、看護とは決して無縁のことではない。
(出典:『看護実践の科学』34巻3号99ページ、看護の科学社)
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