思い込みで行ってしまった日常的な治療・ケアが症状の悪化や事故の原因になることも。今回はアイスマッサージによる摂食嚥下訓練の効果についてです。嚥下反射を改善する効果があるのか、適応するのはどのようなケースかなどを解説します。
摂食嚥下訓練のアイスマッサージは、すべての患者に行うわけではない!
アイスマッサージに適した患者とそうでない患者がいる
●アイスマッサージの効果は疑問視されている
●意識レベルや嚥下頻度が低下した患者に、アイスマッサージは適している
アイスマッサージで嚥下反射を誘発する
摂食嚥下障害の患者に対する訓練で,もっとも有名なのはアイスマッサージではないでしょうか。冷水につけた綿棒や凍らせた綿棒などで、前口蓋弓だけでなく舌根部や軟口蓋、咽頭後壁の粘膜を押したりなでたりして、嚥下反射を誘発する方法(図1)です1。
よく似た方法で冷圧刺激(thermal-tactile stimulation、原法は冷やした間接喉頭鏡で前口蓋弓のみを刺激する方法)というものもあり、両者を区別している文献1もありますが、「咽頭を冷やしたもので触れる」という点は共通しています。
また、臨床では両者を区別することなく行っている場合が多いので、ここでは両者ともアイスマッサージとして扱います。
図1 アイスマッサージ(間接訓練)

アイスマッサージの効果が疑問視されている
さて、この有名なアイスマッサージですが、臨床で行ってみて効果はありましたか?「効果があった患者さんもいたけど、そうでない患者さんも……」という印象かもしれません。「刺激時には嚥下は誘発されるが、持続効果がない」といった報告も多く、もともと言われてきた「食事や唾液に対する嚥下反射を改善する」、という効果については疑問視されるようになりつつあります2。
嚥下反射を改善する効果を疑問視する根拠としては、以下のような考え方があります。
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