川嶋みどり 看護の羅針盤 第156回

　20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 （ライフサポート社、2020年）。　

　この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

　歴史的に見ても、医療や看護の技術は、最初に理論があって成り立ったのではなく経験を通して発展してきたと言ってもよい。だが、知識の拡大や技術の進歩にともなって、ともすると個人的な経験は軽んじられがちである。経験は学問と無縁であるかのような考え方がないわけではない。しかし、看護が実践の学であることを認めるなら、経験の意味について再考する必要があると思う。
　経験とは、人間が実践を通して外界の事物や現象と触れ合い、その性質やふるまいかたを直接に知覚することである。（中略）
　
　つまり、その経験的知識はどのような条件下で得たのか、再現性があるのかどうかについての吟味を抜きにしてはならないと思う。

（出典：『看護の技術と教育 看護の時代3』121ページ、勁草書房）

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