20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
リスクマネジメントの名において実施している
事故防止策が、医療現場のIT化の進行と併せて
患者の尊厳を脅かしている
現在、リスクマネジメントの名において実施している事故防止策が、医療現場のIT化の進行と併せて患者の尊厳を脅かしていることを見ないわけにはいかない。背景には、「2010 年までにいつでも、 どこでも、 誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」を目ざした「IT新改革戦略政策パッケージ」がある。
現に施設規模を問わず、オーダリングシステムやレセプト管理、電子カルテへの移行が進み、外来診察室の医師も病棟看護師も患者に注ぐ目は二の次で、ディスプレイに集中している。つまり、医療の基本理念である人間を見る目が曇り、その結果、患者の尊厳をも奪いかねない状態がじわじわと進行している。
(出典:『看護時鐘 のどもと過ぎた熱さをいま一度』92~93ページ、看護の科学社)
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